それからちょうど1ヶ月後。
この前までは久し振りだったのに、もう慣れてしまった波の音に起こされ、枕元に置いておいた電子手帳を起動させる。
お腹あたりに圧迫感を感じ、後ろを振り向く。そこには案の定凪斗がすやすやと寝息を立てて寝ていた。つまりはこの圧迫感は、彼の腕が私のお腹に巻きついているから。
こんなことが毎朝起こっているわけだが、私はここまで甘い展開が実在するとは思わなかった。正直、私から甘えることなんて出来ないと思っている。変なプライドのためか、それともただ単に羞恥心か。


「おっ、」


電子手帳のメール欄に一通。苗木くんからだ。この電子手帳にメールが来ることはほとんどない。私がぼっちだから、というわけではない…と思いたいが。
何か急用だろうか。
ほとんど1ヶ月で完成する、と言っていたことを全く忘れていた私は、そんな事を思っていた。メールを開くと、可愛らしい絵文字や顔文字とともに苗木くんらしい本文が広がる。


『ビルが完成したよー!!
なまえさんがデザインしてくれたから、とってもいい感じに仕上がってる(*^_^*)
橘さんや長谷川さんも満足してるし、なまえさんの事をべた褒めだよ〜

それと、明日くらいに船を出してもらうから、こっちに来る皆に荷物をまとめるように言ってね(・ω・)ノ
じゃあよろしくね〜!』


うん。可愛らしい。
ビルの完成を喜ぶと同時に、私は仕上がったビルがどんなものかワクワクしていた。1ヶ月前に見たときにはもう完成に近かったが、やはり完成したものと完成していなかったものは違う。本当に楽しみだ。

私は起きるためにまだ寝ている凪斗の腕から脱出した。凪斗が「ん…っ」と色っぽい声を出していたが、関係ない。着替えてしまおう。
そして私が選んだのはいつも通りパーカー。着替え終わると同時に、凪斗がむくっと起き上がった。眠そうに目をこすっている。


「おはよ」

「…ん…早いね…」


このままだとまた寝てしまうそうだ。私は苦笑して、凪斗を起こしに行った。


~


レストランに行くと、いつも通り皆がいた。
揃っていることを確認して、聞こえるように声を張り上げる。


「はい、ちゅーもーく!!」


響子さんのようにはいかないが、注目を集めることには成功した。


「ビルが完成したので、島を出る人は明日までに荷物をまとめてくださーい」


すると、それを聞いた全員が目を輝かせてくれた。島を出る人はもちろん、まだこの島にいる人も、全員だ。
島を出る皆に「また写真送ってよ!!」と笑って、見送っている。
席に戻り、隣の凪斗を見てみると、彼は微笑みながらこちらを見ていた。


「迎えに来たのはなまえさんだけど、それでもボクはなまえさんとこの島を出るよ。
この島を出て、改めて告白する。だから、忘れないでね」


「ボクとの約束」そう言って、凪斗はまた微笑んだ。
あぁ、ちくしょう。なんて綺麗なんだ。

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