そこに響く機械化された響子さんの声。レクリエーションを始める、というお知らせだ。
凪斗は私の腕を引っ張り、楽しそうに砂浜を駆けた。その姿さえ綺麗なのが、なんとなくムカつく。
そういえば、凪斗も身長が少し伸びた気がする。私と20cm近い身長差だなんて…くどい様だが首が痛いったらありゃしない。さっきのキスだってそうだ。お互いにしゃがんだり、背伸びしたり…縮め。


~


ホテルのロビーに着くと、また盛大な歓迎を受けた。響子さんいわく、この時間をとるためにレクリエーションの集合時間を早めたとか。
この日の報告は、私がこの世界に来た時と似たような報告だった。改めてジャバウォック島に来た、という感じがすると共に、懐かしさが溢れた。


「はい、注目しなさい」


響子さんはそう言って、パン、と手を叩き、場の空気に適度の緊張感を広げた。
皆の注目が響子さんに集まり、その隣に立った私にも注目が集まった。皆にはこの計画のことを言ってなかった。苗木くんや未来機関が皆をビックリさせたいと言ったので、完成に近付くまで言わないことにしていたのだ。
私はすぅと息を吸い込み、言うべき言葉を紡いだ。




「皆に報告。

この島から出て自立したいと思う人が、どんどん出てもらって、自立していくための計画が完成に近付いてるの。
その計画の内容は、ジャバウォック島から出た皆が、きちんと自立できるように、なおかつ寂しくないようにサポートする、"ルームシェア計画"。

まぁルームシェアと言っても、ビル丸ごとなんだけどね。
で、島から出た皆はそこに住んでもらって、未来機関の一員として働く。未来機関の一員となって、世界の更生を進めていくの。

まとめると、
1、島から出た場合は未来機関の一員として働き、そのビルに住む。
2、未来機関の一員として世界の更生に尽力する。
だけかな。

完成次第、私は戻るんだ。その時に、出たいと思う人は一緒に島を出る。もちろん、戻ってくることも出来るから安心して。
じゃあ、まず私が、俺が…っていう人はいる?」




説明の後にそう挙手を促す。
すると、皆は顔を見合わせて不安げな表情を浮かべた。やっぱり、住み慣れたというか、そこから新しい場所へと行くのは不安なのだろう。


「ボクは行くよ」

「俺も行く」


そう言って手を上げたのは、案の定凪斗と日向くん。
その2人が手を上げたからか、不安げながらも期待を込めた瞳をしていた人たちが頷いた。「オレも」「わたくしも」と手を上げて、新しい世界への一歩を踏み出す。
その姿がなんとなく眩しくて、目を細める。本当に私の方が年上というかなんというか。
最終的に手を上げたのは、コロシアイ修学旅行で生き残った皆と凪斗の6人。九頭竜くんが手を上げたからペコちゃんも手を上げるかな、と思ったのだが、彼女は上げなかった。プログラムの中であっても、人を殺した人たちは気が引けるのだろうか。


「他の皆も、気持ちの整理がついたらいつでも来てね」


諭すようにそう言うと、皆はゆっくりと深く頷いた。いつかはその日が来ると確信できる。そんな瞳を持っていたから。

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