「…いない…」


コテージやらホテルやら全て見回ったと思うのだが…見つからない。
そういえば、こんな事が前にもあった気がする。いつの事だったか…凪斗と私の気持ちが分かった時だったっけ。うん。そうだった気がする。
…ってことは。


「…デジャヴにかけますか」


よし、と意気込んだわりに、当てずっぽうな彼探しである。


~


砂浜。私はそこに辿り着くやいなや、凪斗探しを始めた。
最後はあのヤシの木。


「…ーーいない…」


デジャヴでも何でもないじゃないか。自分でも分かるほど、落胆している。どれほど私がお前に会いたかったか、分かってるのかこのヤロー。そう叫びたい。
疲れた足を休めるため、ヤシの木の木陰にストンと腰を降ろす。


「会いたいなぁ…」


そう呟くと、一気に感情が溢れ出した。
会いたい会いたい会いたい…
純粋なその感情。ただ、彼に会いたいという感情だけが、私を支配した。久しぶりなのに、なんでいないんだ。


「あの白髪ヤロー、会ったら締め上げてやる」


誰かにそう誓い、膝と膝との間に顔をうずめる。この感情は寂しい…それだと分かった。
あーあ、もうすぐ日が暮れてしまう。もう太陽が海へと沈んでいきそうだ。

その時だった。







「…ーーなまえさん、」







ああ、やっと、


「ばーか」

「あはは、出会い頭にそれ?」


やっと会えた。

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