それから一ヶ月間、私たちは念入りな話し合いをし、計画を完成まで持ち込んだ。後は建ててもらい、皆がこちらに移り住んでうまく過ごすだけだ。


「じゃあ、今日からは俺たちにバトンタッチだ。安心しろ。俺たちは"超高校級"だからな」


そう言って、橘さんは現場へと向かっていった。
長谷川さん曰く、橘さんを中心にプロの大工を百人近く動員し、急ピッチで建築を進めるらしい。それも未来機関が出費してくれるのだから、なんだか申し訳ない。


「もう後は出来上がりを待つだけだね」

「そうだね。後は皆の反応が楽しみかな」


皆はどんな反応をしてくれるのだろうか。こちらに来ても、きちんと生活できるだろうか。
私の方が年下なのに、なんだか私が保護者みたいだ。そんな不思議な感覚に、私は身をよじらせた。


「完成は1年半くらい、って言ってたっけ。それまでに皆、心の準備をしてくれてたらいいんだけど」


心配だなぁ、なんて。
疲れたのか、ため息を一気に吐き出す。それを聞いた苗木くんは「あ、そうだ」となにか思い浮かべたようだった。
苗木くんを振り向くと、彼はなぜか寂しそうに微笑んで口を開いた。


「これからマンションが出来るまで、ジャバウオック島に行くことになったんだよね。
だから、最低でも1年はさよなら。ボクがいなくても頑張ってね」


その帰還を私ではなく、苗木くんにまかせるのはなぜだろうと思った。が、考えてみれば私は計画の中心人物となっている。私が現場から離れてしまっては意味がない。
私は帰還のチャンスを任せる事が、少し名残惜しい気もしたが、苗木くんに任せる事にした。


「うん、分かった。こっちの事は任せて。だから、向こうの事は任せる」

「もちろん!!」


そう言って、お互いに笑いあう。「1年後には苗木くんは背が伸びてるかなぁ?」なんてからかってみると、彼はムキになったように「伸びてるよっ!!」と唸った。
実際は私の方が小さいのだが、どうしても苗木くんの方が小さく思えてしまう。それは何故か、と問われれば、私は真っ先に彼の公式ビジュアルをつらつらと並べるだろう。
「え?苗木くんがなんで小さいイメージしかわかないのかって?それはね、公式で"童顔のファニーフェイスは腐女子を取り込めるなかなかの美少年"だからかな!!ほら、皆は美青年なのに、苗木くんは美少年でしょ?ほら、小さい」などと言えそうな気がする。


「170近くになりますように…っ」


…などと言っているが、今の方が断然可愛らしい。苗木くんが170近く…なんとも言えない絵面だ。170近くになんてならないでくれ。

…そういえば凪斗の身長は180cmだったか。私とは20cm近く違うという事だが…また身長を伸ばしていないか心配だ。首が痛いのだ。首が。

…ーーなんとなく、会いたくなってしまった。
が、帰還するのは苗木くんだ。
私だって、この仕事が終われば皆と会うことだってできるし、皆がこちらに移住してきたら一緒に仕事ができる。そうなれば、いつもより一緒にいる時間が長くなるじゃないか。
自然と頬が緩むのが分かったが、そんな事は関係ない。
はやく、皆と会いたい。そうワクワクする気持ちを抑えられなかっただけだ。

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