04 | ナノ


昨日は一体何が起きたのでしょう、理解できないままワタクシはいつも通りに出勤しました。相変わらず愚弟は無表情のまま、業務以外の会話もありません。話し掛けようと何度試みるものの、全てあしらわれてしまいました。
マルチの呼び出しがかかれば必然的に隣に愚弟はいるのに、何も出来ない、何も言えないのです。ワタクシが何を言いたいのか。どうしたいのか。様々なことが頭の中で渦巻いているようで。ただただ重苦しい時間が過ぎ結局挑戦者も途中下車、終始無言でした。















「……これは、何かの悪夢だったのでしょうか」



そうです、何かの間違いかもしれません。最近ワタクシきちんと休息を取っていなかった気がしますし、疲労が溜まって変な夢でも見たのです。今までも愚弟は笑わぬままでしたが、確かに家には居たではありませんか。時計を見やると既に日付は変わっていた。今日はもう帰りましょう、きっと愚弟は家に居るはずです。
軽く身支度を整え、夜勤の職員に挨拶を済ませ帰路につく。真夜中だと言うのに煩い程の街のネオンと雑踏を横目にしながら足早に通り過ぎる、早く、早く家に帰らなくては。















若干上がった息を整え、玄関の扉を開ける。ですが、明かりなどは灯っておりません。寒々とした部屋がワタクシを迎えました。……夢では、無かったようです。現実を見ない事すら許されないというのでしょうか、いつまでも玄関に立っているわけにはいきませんし、リビングへと足を運ぶ。やはり暗闇に包まれたまま、ひやりとした空気が肌に纏わり付くようです。電気を付け、誰も居ない部屋が明るく照らし出されました。















「何故、ですか……?ワタクシ、何かしましたか……?」



本当に、何も心当たりが無いのです。普段の些細な喧嘩は少なからず何が原因なのかはっきりしておりますが、今回ばかりは何も、本当に何も。ワタクシが知らないうちに気に障るようなことをしてしまっていたのでしょうか。いや、普段ならば不快に思えば愚弟ははっきりそう言ってくるはずです。何故、何故?考えれば考える程思考は泥沼にはまっていくようで。比例するように胸の痛みも増して、心臓が抉られるようです。



「独りにしないでくださいまし」



ぽつり、ぽつりと吐き出す言葉と共に渦巻いているこの感情は何でしょう。痛い、痛い。この広い家で独りは寂しい、何故貴方は。いつも隣に居るからと言ったのは誰ですか、貴方では無かったですか。鬱陶しいと言われても離れてやらないと言ったのは誰ですか。全て全て、貴方がワタクシに言ったことでしょう。



「置いて行かないでくださいまし」



ワタクシの隣で、笑っていて欲しかった。ただそれだけでワタクシ幸せでしたのに。それだけでも良かったのですよ。お前の言葉に甘えすぎていたのでしょうか。ワタクシがそれを感情として、言葉として表せば何か変わっていたのでしょうか。



「エメット……!」



煌々と明かりが灯る部屋に絞り出したワタクシの声が響く。刺すような痛み、この痛みは、この痛みは。そうですかワタクシ相当、貴方に依存していたのでしょう。気づくのが遅すぎたようで。もう何も分かりません、エメットはもう何も話してくれないのですから。……頬を冷たい何かがつたったような気がします。











あの時貴方は、笑っていたのに

―――――
(ワタクシの声に、応えて)

短編とは言えない長さになってしまいました、これであの時貴方は、完結となります。
とは言いましたが、自分がやりたかったことを詰め込んだ結果がこの無様な文……申し訳なさで土下座ですね……
しかし、このままでは何故エメットが笑わなくなったのか。家を出て行ってしまったのか。全て謎のままですっきりしませんよね、私もすっきりしません。そのうちエメット視点でも書こうとは目論んでおりますがどうなることやら……私の脳内ではハッピーエンドとバッドエンド、どちらにも転ぶことが出来ると思って居るのでどちらにしたものか……
それでは、長々と失礼致しました、ここまでのお目通し、ありがとうございました。

2012.12.15 執筆



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