※ほんのり死ネタ注意
ポツリ、顔に雫が当たる。
「雨……ですね」
勢いよく降りだす雨にわたくしは独り体を震わせた。ただただ佇んでいるわたくしは、他人の目にはさぞ滑稽極まりなく写っているのだろう。まあ、わたくしには関係の無いことです。
「こんな夜は、嫌いです」
空気と一緒に言葉も吐き出してみましたが、やはり虚しいだけでした。未だにわたくしは、目の前に転がっているモノが何なのか理解できずにいます。
「違いますね、理解できないんじゃなく……」
理解したくない。ただ、それだけなのです。
わたくしが愛した貴方はもう。
「二度と、わたくしを抱きしめてくれない。」
わたくしが愛した貴方はもう。
「二度と、笑いかけてくれない。」
わたくしが愛した貴方の笑顔は。
「もう二度と、見ることができない」
呟く言葉は真夜中の空に吸い込まれるように消えていく。
「わかりませんね……」
確かにわたくしが選んだ道でした。でも結局楽になるどころか、ただただ悪戯に苦しくなっただけで。本当にこれが正しかったのか。……わたくしの頬を流れるこれはただの雨粒なのか、はたまたわたくし自身が流す涙なのかどうかも。
わたくしはその雫を拭うこともせず、そのまま路地の先、暗い闇の中へと歩き始めました。
Scabiosa
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Scabiosa(スカビオサ)
別名:マツムシソウ
花言葉:わたしは全てを失った
そんなノボリさんの独白。解釈は皆様にお任せいたします。よく考えたら誰が相手でもいけますねこれ。
2012.11.12 執筆