愚かですね | ナノ


「おや、挑戦者ですか?クダリ?」

「うん、今日はスーパーダブル!」

「ほう、スーパーは久しぶりではありませんか?」

「そうだね!今日はすっごい勝負、できるかな?」










嬉しそうに身嗜みを整えるクダリに、そうですねとだけ告げ手元の書類に意識を戻す。随分とご機嫌の様子、何を期待しているのやら。そんなクダリを見ているとやはり苛立ちが収まらなくなりまして。思わずペン先に力が入って、若干インクが滲んでしまいました。やはりカルシウム不足なのでしょうか。今日のコーヒーにはミルクを入れましょう。















「…ボリ、ノボリ!!」

「っ、すみません少々呆けてしまいました。どうかしましたか?」

「ここ、字、違う。」

「…おや、わたくしとしたことが。」

「ノボリが間違えるなんて、珍しいね?」

「そうでございますか?それより…クダリ、お客様を待たせてはいけませんよ?」

「あっ、そうだ!いってきますノボリ!」

「いってらっしゃいまし、お気をつけて。」














準備を始めたのは早かったはずなのに、慌ただしく車掌室を飛び出して行きました。ドアが半開きのままなので後で閉めなければなりませんね。全く、あの子はいつまでも子供なのですから…世話が焼けます。しかし、クダリに書類のミスを指摘される程集中が乱れてしまうとは。










「…少々、休憩にいたしましょう」










わたくし以外誰も居ない部屋に声が響く。ただの独り言ではありませんか、わたくし一体何をしているのでしょう。軽く背筋を伸ばし、コーヒーを入れる為に席を立つ。















すぐにコーヒーの香りが部屋に充満し、コポコポと抽出される音が響き出す。クダリの分も淹れておきましょうか?しかしそれでは帰ってくる前に冷めてしまいますし…。まあ、あの子は猫舌ですし多少冷めてしまっても問題ありませんね。










コーヒーを二人分のマグカップに注ぎ、クダリの方には砂糖とミルク。そういえば、わたくしも今日はミルクを入れようと思っていたのでしたね。わたくしのマグカップにも注ぎ、ソファーに腰掛ける。さて、クダリのバトルはどうなっているのでしょう。















壁にあるモニターに目をやると、丁度バトルの最中。シビルドンの10万ボルトが炸裂しておりました。流石です、としか言えないですね。どうやら挑戦者の敗北が決定したようでございます。










ほら、ソレが貴方の望むすっごい勝負なのですか?どんなに綺麗事で言い繕ったとしても、暇潰しは所詮暇潰しでしょう?何故ソレを認めないのです?拒むのです?貴方だって本質はわたくしとあまり大差無いでありませんか。それでも貴方はすっごい勝負を望むのですか。






愚かですね

―――――
(貴方は一体いつ気が付くのです?)

2012.02.16 執筆
2012.11.03 加筆修正


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