運というものについての話をしよう。
幸運や不運といった、いわゆる自分の意思や努力では手繰り寄せたり回避することのできないなにかについて。
俺はその日まで、幸運も不運も特別感じることなく25年を生きてきた。
人によればそれ自体が幸運である証左に他ならないらしいが、個人的には特に何の感慨も抱かずに。
物心ついた頃から容姿に関して誰かに貶されたことは無い。無理をしなくとも勉強も運動も常に人の上をいったし、世間でいうところの一流校を出て就職したのは世に名を知らぬもののない大企業。
仕事も順調そのもので、そろそろ出世コースの海外転勤の話も出ようかという、人生に何の不満も無かった入社三年目の秋。


そいつは中学生みたいな顔をして、突然俺の前に現れたんだ。