05


今日は勧誘式だった。調査兵団に新たに加わった兵士は21人。例年より少ないが、トロスト区の件があった割には多いと思う。予想通り、エルヴィンは嘘偽りもなく真実を全て話した。多くの兵士がそれに絶望した。だが、それでもあの場に残ってくれた新兵たちの覚悟は誰にも負けないであろう。

…あの時会った少年。ジャンも入団したのだろうか。新兵全員の顔をちゃんと見たわけではないから、よく分からない。そういえば、今年は上位十名に入った優秀な新兵が多いらしい。ジャンもその中の一人。…それはありえないか。偶然にも程がある。

「エルヴィン。用って何?」

その日の夜。私はエルヴィンに呼び出されていた。指定された時間に彼の部屋を訪れ、少し談話した後に本題を聞き出した。彼のことだ。ただ談話するために私を呼ぶことはほぼありえない。何か意味があるに違いない。

「率直に言うが…。アルマ。次回の壁外調査までの一か月…一人の新兵の指導にあたってもらいたいんだ」
「え?」

思わず口から洩れた言葉通り、一瞬ぽかんとした。私が新兵の指導?毎年、新兵の指導は戦歴が私より少し短い班長となる人物が行うことになっている。分隊長である私に回ってくる仕事ではない。それに全員ではなく一人だ。個別に指導をするなんて、今までなかったようなものだ。それが何故、今になって…。

「勿論、君の部下たちとの訓練も今まで通り行ってもらいたい」
「それは分かってる。私が聞きたいのは新兵のこと。…何か意味があるの?」
「壁外調査までの間、新兵は各班に配置することになった。だが、この前の壁外調査で部下を庇って死んでしまった班長がいてね…。その穴を埋めるのを君に頼みたいんだ」
「…理由はそれだけ?」

それも理由だろうが、それだけではないはずだ。エルヴィンがこれだけの理由で頼み事をするなんてありえない。いつも何かしら理由が含まれている。

「やはりお見通しか。…実は私も彼のことをよく知っているわけではないが…教官たちの話や彼の噂を聞いて、いい素質を持っていると判断したんだ。だが、彼はその力を十分に信じ切れていない。そのために、君の力が必要なんだ」

エルヴィンが言う"彼"とは、誰のことなのだろうか。ふと、ジャンの顔が浮かぶ。まさか…そんなわけがないか。だったら、偶然にしても出来過ぎている。

けど、ジャンはこれから先、重要な人物になる…気がする。確信を持っているわけではない。けど、誰もが仲間の死を悲しんでいる中、彼は前に進むことを考えていた。所属兵団を聞いた時の彼の反応もそうだ。きっと、トロスト区でのことが彼を変えたんだろう。人が変わることは難しい。そうすぐに変われるものじゃない。けど、彼は仲間の死を乗り越えて、変わろうとしている。まるで、今、私の目の前で話している彼のようだ。

「その訓練兵の名前、教えてもらってもいい?」
「ああ。…ジャン・キルシュタインだ」

私の中で一瞬時が止まった。けど、それはすぐに動き出し、自然と頬は緩んだ。偶然って、あるものなんだね。