06


今日は座学のテストの返却日だ。教卓にいる教官が一人ずつ名前を呼んでいる。クラウスシェーナー。教官が俺の名を呼ぶ声が聞こえる。席を立ち、教卓まで歩いていく。周りからは点数を見せ合っている声、分からないことを友人に聞く声…さまざまな声が聞こえてくる。教官の前に立ち、答案用紙を受け取った。次に受け取る奴の為にすぐに自分の席に戻り、点数を確認する。………97点。うん、いい感じだ。

「うわ、クラウス、スゲーな!!」

エレンは答案用紙を覗き込んできたかと思えば、そう言った。しかも、結構大きな声で。その声を聞いてジャンやコニーも俺の方に集まってきた。皆、スゲーって言うけど、成績が悪いわけじゃない。…コニーは別だけど。

エレンは頭脳は普通だけど、格闘術と努力は誰にも負けない。ああ、格闘術はまだアニの方が上か。ジャンは状況判断がよく出来ていてリーダーに向いていると思う。コニーも馬鹿だけど、素早い動きが出来ることから実戦では有利なタイプだ。それに比べて俺は座学でしかいい点が取れない。

「やっぱりクラウスは技術班に入るのか?」
「あ、俺は………」

そうエレンに言われ、返事をしようと口を開いた。けど、それと同時に教官がテストの解説を始めると言い、皆、すぐに自分の席に戻った。ガタガタと席に着く音が教室中に響くが、少しして無音の空気が広がった。すぐに教官は解説を始めたが、正直、その内容はほとんど耳に入ってこなかった。さっきのエレンのセリフで頭は埋め尽くされていた。

…やっぱり俺、技術班に入った方がいいって思われてるんだ。そうだよな。立体起動も駄目、体術も駄目。実戦には不向きな成績だ。頭ではどうやればいいか想像出来ている。けど、それを実際にやろうと思っても出来ない。それに実戦では巨人がいるんだ。巨人は見た目の割に素早いと座学で習った。巨人が目の前に現れたら混乱するに決まっている。訓練でこんなんじゃ、実戦で出来るわけがない。

頭を活かして技術班に入るべきなのか?……………違う…。違うんだよ。俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ。

「(今度こそ、守るんだろ…)」

両手に力を入れ、答案用紙を握りしめた。答案用紙の端っこは、ぐしゃっと皺が出来ていた。

もう、守れないのは嫌なんだ。