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「調査兵団に入って、外の世界を見るんだ!!」

事が始まったのは数分前。一緒に晩ご飯を食べていた同じ訓練兵の男の子たちに何で訓練兵に志願したんだと聞かれたのが始まりだった。男で訓練兵に志願することは余程裕福でない限り、当たり前のことだ。だが、女が志願することは珍しいことだった。実際、今期の訓練兵中、女の割合は一割にも満たないと思う。こんな男だらけのむさ苦しいところで訓練をしていれば、男にとって女はある意味、特別なもの。そして、何で訓練兵に志願したのかという好奇心が男たちの中に生まれていた。

聞かれたことに素直に答えた。私の中にあったのはそれだけだった。…それなのにだ。食堂中が静まり返り、皆が私の方を見ていた。そして、隣のテーブルに座っていた男が口を開いた。

「お前、馬鹿だろ」
「ハァ!?何が!?」

男は呆れた目で私を見ていた。そして、馬鹿という言葉。カチンと来てしまい、思わず言い返してしまった。食堂が静かなのは変わりない。私と男の二人だけの声が響いていた。

「調査兵団に入りたいなんて、よっぽど死にてぇんだな」
「私は死に行くんじゃないよ。外の世界を見に行くの」
「調査兵団の現状知ってんのか?死人ばかり出して、何の成果も挙げられてねぇ。調査兵団に入るなんて、ただの自殺行為じゃねぇか」
「だから…巨人と戦って生きるためにここで訓練するんでしょ!!!!」

そう言い放つと今まで静かだった外野はガヤガヤと騒ぎ始めた。無謀だ。ナイルの言うとおりだ。けど、ナマエの言うことも間違ってはいないだろ。いろんな声が聞こえた。ナイルは…この突っかかってきた男の名前か。私の言うことに少し耳を傾けてくれる人もいた。けど、大半はナイルの言うことが正しいと認識していた。

私は外の世界を見たいだけ。それの何がダメなの。外の世界に行けば巨人がいる。けど、その巨人に食い殺されないために私たちは訓練するはずだ。今からここでの訓練を否定してどうするっていうの。馬鹿はそっちでしょ。

私とナイルは睨み合っていた。お互い、互いの目をじっと睨み、どちらも逸らそうとしなかった。絶対逸らしたくない。逸らしたら負けな気がする。だから、お互い引こうとしなかった。すると、突然、私とナイルの間に一人の男が割り込んできた。男はナイルの方を向いており、顔は見えない。誰だろう。そう思っていると、割り込んできた男の声が聞こえた。

「ナイル。あそこで言い返さなかった時点で君の負けだよ」

その声を聴いた途端、私の胸はドクンと鳴った。そして、視線は彼に釘付けになっていた。私はこの男を知っている。彼の名はエルヴィン・スミス。今期の訓練兵の中で少しばかり有名となってる男だ。