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「でさ、台所で物音がするといつも濡れたコップが置いてあるんだよね」
「………それ本格的に危ないだろ」
「そうかな?」
「お前の時たま現れる鋼の無神経には本当に敬服するよ」
「おだてたって何も奢らないよ」
「おだててもねーし何も求めてねーから」

帰りが一緒になったバネと歩きながら、一連の怪奇現象について話していた。この頃バネは部活、俺は委員会で時間が合わなかったからこうして会話出来るのは正直嬉しい。

「そういやさ、サエは何か部活入らないのか?」
「んー…」
「お前中学のとき剣道強かったじゃん。こっちにも剣道部あるしさ」

確かに部活もやりたいのは山々だが、まだ家事に慣れてないのにやるのは少々不安が残る。それに、部活でクタクタな上、ご飯も自分でというのは自炊歴二ヶ月ちょいの俺にはハードな気もする。

「もうちょっと落ち着いてから考えるよ。5月辺りまで保留かな」
「早く決めないと大会とかあるからな、サエなら大丈夫だろうけど」
「バネは俺のこと買い被りすぎだよ」

バネの家近くの別れ道に差し掛かるまで俺達は何時もより小さい歩幅で歩きながら他愛もない会話で盛り上がった。

「じゃあ、また明日」
「おう。幽霊に気を付けろよー」

そう手を振りながらバネは十字路を右へ曲がって行った。俺も早く帰ろうと足を踏み出した途端、ぽつりと頬に何かが落ちてきた。次第にそれは頭や肩、バックや地面へぽつぽつと数を増やしていく。夕立だ。

「参ったな、傘持って……あっ!」

しまった。今日は一日晴れと聞いていたから庭に洗濯物を干したまま来てしまったのだった。バックで濡れた頭をかばいつつ、水浸しのコンクリートを全力で走った。家へはそう遠くはないが、この雨の勢いだと既に洗濯物は駄目になっているかもしれない。
焦燥感に刈られながら家に着いた時には、案の定洗濯物は見事にびしょびしょに濡れてしまっていた。

「…お天気お姉さんの嘘つき」

とても良い笑顔で今日の天気を告げていたお姉さんを恨めしく思うが、過ぎてしまった事は仕方ない。濡れてしまった学生服を干した後、洗濯物を再度洗濯機に突っ込んで晩ご飯の準備に取り掛った。台所の流しには何時も通り濡れたコップが置かれていた。

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