穏やかな日光に当てられた肌を、涼しげな風が撫でていく。
この前までのうだるような暑さは何処へやら、屋上にいても随分と過ごし易くなった天気に、うとうとと思わず眠くなってしまう。
すると、ギイイと古びた屋上の扉がゆっくり開く音がした。

「幸村、おるんじゃろ」

仁王だ。
大方あいつも授業が面倒になってサボりに来たんだろ。
入口の上から顔を出すと、マフラーまで装備した仁王が梯子を登っていた。

「よく俺がいるってわかったね」
「さっきチラッとみたんじゃ」
「ふーん。それはいいけどなんでマフラー付けてんの」
「寒いからに決まっとるじゃろ」
「セーターまで着込んでるのにその台詞はおかしいと思う」
「屋上は風ふいてて寒いからの」
「サボる気満々か」
「幸村だってそうじゃろ」
「当たり前じゃん」

こんな良い天気の日に室内で勉強なんて、それこそ頭がおかしくなる。
それに授業サボってるのはお前も同じじゃないか、と言うと「こんな天気に座ってお勉強なんてかえって頭がいかれるじゃろ」と返されたので笑ってしまった。

「あー、すっごいヒマ」
「何も持ってこんかったのか?」
「途中で抜け出してきたんだから持って来れる訳ないだろ」
「ならポッキー食うか?」
「え、どっから出したの」
「まっさはるのイリュージョン」
「この味うまいね。新発売だっけ」
「自分から聞いといて無視か」
「予想ついてたし」


2人しかいない屋上にお菓子を食べる音だけが響く。
校庭でサッカーをしている生徒をぼーっと眺めていたが、反対側にあるテニスコートに目を向けた。
部活をしている時とは違い、静かな景色がとても新鮮に感じる。

「ねえ」
「なんじゃ」
「確か部活に予備のラケットあったよね」
「それがどうした」
「テニスしようよ」

そう言うと仁王は明らかに面倒くさいといった顔をした。

「ジャージないし」
「別に制服でも平気だろ」
「寒い」
「動いたら暖かくなるって」
「面倒」
「部長命令でも?」
「…職権乱用はいかんぜよ」
「俺に勝てたら昼食奢ってあげるよ」

その言葉に一瞬ぴくっと動いたが、再び不服といった目線を投げ掛けてきた。

「お前さんに勝てと」
「分かんないじゃん」
「えー」
「それじゃあ後30分間ずっとここでダラダラしてるの?」
「それでいいじゃろ」
「俺が暇だからダメ」

寝る体制に入った仁王を無理矢理立たせ、梯子を降りる。
誰もいないコートでテニスなんて楽しそうだ、なんて考えながら二人で静かにコートまで走った。



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普段は真面目だけどたまにサボりたくなる幸村と、サボり魔な仁王。

仁王の口調がすごく適当。





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