俺にはある悩みがある。

「なあ、謙也は心中と後追いどっちが好きなん?」

それは他ならない、この親友である白石のことだ。つーかもう親友って言っていいのかすら危うい。普段こそイケメン(笑)優等生で通ってるコイツだが、俺の前だと本性を剥き出しにして一緒に死のうとかほざいてくる。

「なー謙也、どっちがいい?」
「どっちも嫌や」
「せやったらどうやって俺と死んでくれるんや!」
「まず死にたないわ!」
「えーそら困るわ、俺の計画が水の泡やん」

計画ってこいつ一体何を企んでいるんだ。真面目に考えるなら勉強とかテニスとかもっと役立つ事に頭を働かせてくれ。


白石とは一年から同じクラスで、その時は少なくとも「おはよう謙也!今日も良い死に日和やなあ!」が挨拶ではなかった。大体死に日和って何なんだ、勝手に変な日本語を作るな。
白石は二年の中頃からおかしくなり始め、今となってはもうクラスのみんなも慣れてしまってスルーしてる始末だ。最初の頃こそふざけているのかと軽く流していたが、白石と屋上で昼飯をとっていた時、「なあ謙也、俺と死んでくれる?」「んー別にええよ」等と適当に了承してしまい、白石に抱えられて本当に飛び下り自殺をされたことがある。下に桜の木と陸上のマットがあったため、軽傷だけで自殺は未遂で終わった。きっとあの時以上の奇跡は起こらないだろう。もちろんその後で「そんなに死にたきゃ今すぐ殺してやる、お前だけ」と首を絞めたが、「一人で死ぬんは嫌や!謙也と一緒やないと嫌や!」と泣き叫ばれた。白石の中で何があったのか分からないが、非常に迷惑だから俺を巻き込まないでほしい。
以上のことから、過去の教訓を得て白石を調子に乗らせないように接している。

「せや!今度俺の家に「却下」まだ言うてへんねんけど!」
「どうせ飲み物食い物に変な薬仕込む気やろ」
「あ、バレた?」
「当たり前やろ死ね」
「謙也と一緒ならええで」
「くたばれ白石」


心中を図る白石を横へ受け流し、気だるい授業も終わり、ようやく待ちに待った部活の時間になった。部室に行くと、ユニフォームに着替えている銀と財前がいた。

「おー二人共お疲れさん」
「あれ、今日は謙也さん一人っすか」
「白石はんがおらんとは珍しいな」
「あー、なんや委員会寄ってくらしいで…って、何やその言い方。俺と白石をセットみたいな言い方やめてくれへん?」

そういうと財前は銀と顔を見合わせた後、再びこっちを向いて深いため息をついた。それもこれまでにないくらいの呆れ顔というおまけ付きで。

「せやかて、謙也さんくらいですよ」
「なにが」
「心中未遂までされて一緒におるとか、普通ありえませんて」
「それは…ほら、あれや。白石が他の奴にも同じことせんように見張っとるだけや」
「いや、それはないっすわ。年がら年中謙也さんの事ばっか言うてる人ですよ?」
「やっぱ白石はんのこと親友て認めてるんやろ」
「ちゃうわ!誰があんな変態「謙也アアアアアアアアア!!!!」うわっ!」

突然叫びながら俺の背中へと突撃してきた白石。あまりの勢いによろめくものの、倒れそうになるのをなんとか踏み留まった。突撃されて背中も痛いが、後ろから首へと回された腕が絞まってて苦しい。

「おまっ白石離せっ…」
「謙也が俺のこと親友や思てくれてるなんてめっちゃ嬉しいわ!!いつも心中するん断られるから嫌われてるんかと思てたんやけどいらん心配やった!!うわあああごめんな謙也あああ!!!」
「苦しっ…ちょ、白石…」
「よっしゃ!これでめでたくお互いの気持ちも通じ合ったことやしこのまま俺と心中「するかあああああ!!」

軽い酸欠状態で手加減できなかった俺に背負い投げをされた白石は、とても良い笑顔だった。


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きっと二人の気持ちは蔵→→→→→→→→→→←謙くらい





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