なぜ空は青いのか。
時々こんな風にどうでも良いことや、考えても仕方ないものに意識を没頭させてしまう。今日は何だか黒板に並んだ数式を一生懸命ノートに書き写しても一切理解できない気分だったので、冬らしい冷たい風が吹き荒ぶ寒空を眺めていた。

「この問題は受験でよく出題されるやつだからなー、ちゃんと勉強しておけよ」

後で樹っちゃんからノート借りようなどと安易な結論を出し、先生の言葉を聞き流した。今日は本当にやる気が起きない。厳しい先生が担当する授業以外は全て上の空で過ごしてしまい、気づけば既に4時間目が終わろうとしていた。俺は取り繕うことすら諦めてノートとシャーペンを迅速にしまう。残りの5分間は再び空を眺めて過ごすことにした。



「亮、なんか今日ぼーっとしてるけど大丈夫?」

先週から室内練習に切り替わり、ボールを使った練習が少なくなった分、出来る事も少なくなってしまった。バネ達が体育館の真ん中でサーブ練習をしているのを壁に寄り掛りながら見ている最中、サエから冒頭の質問が来たのだ。

「ああ、別に具合が悪いとかじゃないから」
「それならいいけど、樹っちゃんから今日はずっと様子が変だって聞いてたからさ」

やっぱり気付いていたのか、とサーブ練習をしている樹っちゃんに視線を向ける。しかし、こちらには目もくれずに黙々とボールを打ち続けている。

「何か今日はやる気起きなくてさ…ずっとこんな調子なんだよね」
「あー、そういう日ってたまにあるよね。ノート書く気力も無くなったり」
「サエでもそんなことあるんだ」
「そりゃあるよ」

いつも真面目に授業を受けてる印象しかない左隣の男はそう言った。それが嘘なのか本当なのかは、サエの顔からは読み取れなかった。

「…サエ」
「なに?」
「何で空って青いんだろうね」

無理矢理だが話をはぐらかす為に、今日一日中俺の頭を支配していた疑問を投げ掛けてみた。するとサエは「そんなの簡単さ」とすんなり答えを口にした。

「綺麗だからだよ」

驚きと呆れを混ぜた表情をした俺に対し、恥ずかし気もなく堂々と言い放ってみせたサエはさっきと変わらない笑顔だった。綺麗だから、なんて化学的な根拠も何一つない子どものような回答だ。その無駄な自信がどこから溢れてくるのか不思議でならない。

「綺麗って…」
「だってそうだろ?オゾン層とかよく分からない難しいこと考えてるより、綺麗だからって理由が手っ取り早いと思うんだ」
「…すごいこじつけだな」
「そうだね」

相も変わらず爽やかな笑顔を見せるサエに、空とかやる気が起きないとか、本当に何もかもどうでも良く思えてきた。

「あー、なんか俺も打ちたくなってきた」
「じゃあ試合でもやる?」
「お手柔らかに頼むよ」

赤い帽子を深く被り直し、重い腰を上げる。体育館に作られた簡易コートに向かう前に窓の外を横目でチラリと見た。そこには冬らしい高く青い寒空が広がっていた。


====================


なんか最近やる気が出なかったんです、私が。

それにしても室内で硬式練習とか窓ガラス割っちゃうよね!普通体力作りとかだよね!私自身、軟式だったので硬式がよく分かりません…すいません…。





「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -