きみのことで頭を一杯にしてきみへの想いだけを抱いたまま死んでいけたら、どんなにしあわせなのだろうとおもう。溶け合うようにこの世から消えていけたらどんなにしあわせなのだろう。時間に縛られないで無限に開放されるのだろうか、それともきみだけを思って彷徨い続けるのだろうか。どちらも捨てがたいけれど、きみが今を生きて生きたいというのなら、私もその隣にいられたらいいなって思うんだけど。

そうきみに話したら、きみは口の端をを釣り上げて音も無く笑う。綺麗だなあと思って、人差し指で彼の唇の端から端までをつう、となぞる。くすぐったそうにしながらも甘んじてそれを受け入れてくれる彼があまりに綺麗だから、壊してやりたいとも思ってしまうけど、でもどうせ壊れるのなら一緒に壊れたいと思う。

「柳くん」
「お前も今日から柳だろう。蓮二と呼べ」
「蓮二、くん?」

やなぎ、という響きが好きだった私は少し抵抗を感じだけれど自分もそれになれると思うと嬉しくなった。それにれんじ、という響きも嫌いじゃない。これからきっと好きになっていける気がする。綺麗な音。口に出してみると、すぐ空気に吸い込まれてしまうから、何度も舌の上で転がすように呼んだ。一文字一文字を大切に吐いてみる。れんじ、蓮二。

「もうこれからお前は俺のものだ。」
「……うん」
「勝手にいなくなることは俺が許さない」
「蓮二くんも、だよ」

驚いたように、困惑したように、でも確かに嬉しそうに、そうだなと微笑んだ。今度はその瞼に親指を滑らせてみる。きみはその目に何を映して生きてきたのだろう。これからは私だけを映して生きていってくれるのだろうか。

「無論だな」
「ん、ありがとう」

好きだよ、大好きだよ、愛してるよと伝えたくて、でも何だかそれらの言葉では物足りない。私の思いの丈の全てを伝える言葉としては少し力不足である。それだけでは語りつくせない。やな…じゃなかった、蓮二君みたいに頭が良い訳でも語彙が豊かなでもない、私の知る限りの言葉では到底表せそうになかった。

「ころしたいくらい、好き」
「お前になら殺されても構わないがな」
「しにたいくらいすきなの」
「ひとりでは死ぬなよ」
「しなないし、ころすつもりもないよ」

「だって、いま、こんなにしあわせなんだもの」

蓮二くんへの想いを言葉にすることはできないけど、今のこころの状況を口にすることは案外難しくなくて、それはこころにすとんと落ちる納得のいく答えだった。しあわせ。思わず目を背けたくなるほどに眩しく、あたたかくて、綺麗で、息を呑むほどうつくしく、儚いものが確かに存在するという事実に、泣きたくなった。
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