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Hope side
昼に急な会議が入り呼び出されたと思ったら立て続けにトラブルが置き、ライトさんとゆっくりするはずの休日がつぶれてしまった。
幸い明日も2人とも仕事は休みだからいいかなどと考えてトラブル対応にあたり、帰宅した頃には深夜だった。
ライトニングが寝ていることも考えて静かに家に入りリビングの電気を付けると、目の前には非日常的な光景が広がっていた。
「ライトさん、一体どうしたんですか?」
「夜食を作って待とう…と思ったのだが…」
ライトニングは申し訳無さそうに僕を食器やコップがセットされたイスに座らせ、テーブルに軽めの夕食と小さいケーキを運んできた
「お菓子作りとは難しいものだな」
不恰好なケーキを僕の前に並べ終えライトニングもイスに座った
「ホープ、今日は何の日だか分かるか?」
僕はその言葉を聞いて 今日が何の日だったか思い出した
「そう言えば!そうか今日は…」
この世界に来てから数年祝ってくれる人もいなかったし、今日も仕事に追われすっかり忘れていたが今日は自分の誕生日だった。
夕食をとる暇もなく仕事をしていた腹ペコの僕はライトさんが作ってくれた料理をありがたくいただいた。
当然ライトニングの手作りケーキも残さず食べ終え余韻に浸りながら晩酌を交わしているとライトニングは箱を取り出して僕に渡した
「開けてみろ」
そう促されるまま箱を開けると、そこにはとても素敵なアンティーク調のティーカップが入っていた
「これ!あの時と同じ!」
箱の中には以前ライトニングとショッピングに行った時に僕が一目惚れで購入し、階段の事故で割れてしまったティーカップが入っていた。
確かこれは店でも数量限定で売られていて珍しいものだったはずだ。
またこうして手にとれると思ってはいなかったので嬉しい。
「偶然見つけたんだ。ホープ、誕生日おめでとう」
「嬉しいです。ありがとうございますライトさん」
僕がティーカップを手に取りうっとりと眺めているとソファーの間を詰めてライトニングが身を寄せてきた。
僕は丁寧にテーブルの上にティーカップを置き、空いた手でライトニングをふわりと抱き閉める
「今日は僕にとってのサービスデーですか?ライトさん」
「っ!今日だけだ!」
いつもとは違って自分から寄ってくるライトニングは刺激的で、久しぶりに彼女を抱き締めた僕は愛しさで胸が苦しくなった。
ライトニングはお風呂上りらしくいつもの彼女の匂いプラス ボディーソープの匂いがして僕の鼓動をさらに速める。
ああ、こんなにも僕はライトさんのことが好きなんだと頭の中で何度目かの再確認をする。
「ホープ………好きだ…」
こんなに近くにいてもやっと聞き取れるくらいの声でライトニングが囁く
僕はその言葉を聞いてより強く彼女の体を抱き閉める。
「ライトさん………!」
彼女の華奢な体は抱き閉めると柔らかくすっぽりと僕の腕に収まってしまう。
鼻孔を掠める香りも、すらりと無駄の無い筋肉のついた腕や脚も 指をくすぐる柔らかい髪も 透き通るような肌も僕にとっては全てが愛しくて愛しくて。
彼女を知りたい、自分のものにしたい、
もっと触りたい、キスしたい、
今直ぐにでも押し倒して貪り味わいたい、僕が彼女を汚して壊してしまいたい…
今までずっとずっと我慢してきたそんな劣情が僕を支配する。
「………貴女が…欲しい……」
自分でも無意識に掠れた声でそんな言葉を発し、その言葉を聞いたライトニングがピクリと震え僕は我に返った。
見ると彼女はどこか怯えたような、不安そうな、悲しい顔をしている。
―『…これは私の我儘だが、私の心の整理がつくまでそういうことは待って欲しい』
―『ゆっくりでいいんです、僕はいつまでも待ちますから』
数ヶ月前のライトニングの誕生日の時のやり取りを思い出して数秒前の自分を悔いた。
僕は彼女の意思を尊重するとか言いつつ、頭の中ではいつも彼女を傷つけるようなことばかり考えて…
僕は慌てて抱しめていた彼女の体を引き剥がす。
僕は彼女の優しさに自分の都合のいい想像で舞い上がって、時には頭の中で彼女を汚して…全然ライトニングの気持ちを尊重できていなかった。
僕は最低だ。
急に今までの自分が恥ずかしくなりライトニングの顔を見ないようにソファーから立ち上がった
「ホープ…私は…」
ライトニングが何かを言いかけるのを感じたが僕はそれを遮るように言葉を重ねた
「忘れてください。」
ライトニングの頭に手を置いて僕は笑って見せた。
そうすれば彼女は安心する そう思った僕は卑怯だ。
「そうだ、明日も仕事はおやすみですし、どこかに出かけませんか?そうと決まれば今日は早く寝ないとですね!ライトさんも早く休んでくださいね」
そう言って僕はバスルームに逃げ込むと急いで頭から冷たいシャワーを浴びた。
僕は…ライトニングが好きだという気持ちが大きくなるにつれて自分の気持ちをコントロールできなくなってきている。
それどころか自分の気持ちは彼女を傷つけるような方向へ暴走して さっきみたいに彼女を傷つけてしまうようなことを口走って…
このままライトニングの優しさに甘えてしまっては本当に取り返しがつかない事を彼女にしてしまうかもしれない。
僕は本当に最低だ。
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