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目が覚めると見慣れない白い天井が目に入った
体を起そうとすると節々に鈍い鈍痛を感じる。
「お姉ちゃん!」
名前を呼ばれ部屋の入り口を見ると、飲み物を持ったセラ、モーグリが駆け寄ってきた。
「良かったぁ…モグがいきなりね!ご主人様のピンチだクポ!って言うからすぐに飛んできたんだよ!」
痛む頭で記憶をあさる
「…私は…一体何をして…?」
私はホープとショッピングをしていてそれから…
「お姉ちゃんは階段から落ちて病院に運ばれたの、打撲とすり傷だけで特に異常はないって…」
セラの言葉を聞いて私はあった事を思い出した
私は階段を降りようとして誰かに背中を押されて落ちると思ったら…!!
「ホープは!?」
「ホープ君は隣の病室で眠ってるよ。今は大丈夫命に別状はないって……でも…頭を強く打ったのと大量出血で一時は危なかったって…今はノエルがついててくれてる」
私はそれを聞くとすぐにホープの病室へ急いだ。
白く無機質なベットの上には輸血の管や機械につながれたホープが横たわっていた
ホープの顔や腕は確認できる範囲だけでも傷だらけになっていた
「ホープ……」
私は無意識に事故の瞬間を思い出していた。
バランスを崩して階段から落ちかけた私を包んで守ってくれたホープ
おそらくそのまま下まで落下して…
「ライトニング!目が覚めたんだな!」
ノエルの声に現実に我に返る。テレビは付いたままになっていてニュースが流れていた
『…―本日昼頃 ホープ・エストハイム氏が何者かに襲撃された事件について…アカデミアは犯人を捜査しています。エストハイム氏は階段から落下し、アカデミア付属の病院に搬送され今だ意識不明、一緒に落下したアカデミア職員は軽症だという事です。続報が入り次第お伝えします―』
「ホープはこの世界では有名人なんだな…」
ノエルがそうつぶやいた
「違う!狙われたのはホープじゃない!あの時狙われていたのは私なんだ!ホープは私を守ろうとしてこんな事に…私がもっと周囲に気を付けていればこんな事には…」
「まぁライトニング落ち着け、ホープもじきに目を覚ます。それにニュースでも犯人の目撃情報は多数で捕まるのも時間の問題だって…今はホープが目を覚ますのを待とう」
ノエルにそう諭され私はホープの近くにイスを持っていって座った。
ホープの傷だらけの手をおそるおそる握ると温かく、安心すると同時にホープの笑顔が脳裏に蘇り心臓が締め付けられるような感覚を覚えた。
大丈夫、ホープは無事だと分かっていても胸の中にあるもやもやとした正体の分からない焦りが私の胸を支配する。
「お姉ちゃん、自分を責めちゃダメだよ?」
さほど時間が経たないうちにまたニュースが流れ、犯人が捕まったという情報が流れた。
犯人は通り魔で誰でも良かったと供述しているとのことだ。
「悪いのはこんなことをした犯人なの、お姉ちゃんは何も悪くないよ」
セラにもそう諭されつつホープの目が覚めるのを待った
どの位時間がたっただろうか
セラがモーグリを胸に抱きこくりこくりと居眠りをしている
ノエルは窓際で黒い雲から雨の降りしきる外を眺めている
まるで浅い眠りから醒めるかのように、ホープはその綺麗に透き通った翡翠色の瞳を覗かせた。すぐにその場にいた全員がホープの元に駆け寄る
ホープはその瞳に久しぶりに光を取り込み、眩しそうに目を細めている。
ホープは置きあがろうとして痛みに顔を歪ませ、まるで状況が理解できないというように部屋を見渡して何かを考えている素振りを見せた。
「ホープ君…よかった」
「ホープ、私の不注意ですまなかった…」
今まで神経を尖らせていた私はホープの目が覚めたという事に安堵しきっていた。
「すいません…これは一体どういう状況でしょう?」
ノエルがテレビのモニターの電源を入れた
ニュースでは先ほどと大して変わらないニュースが流れていた。
ホープはニュースで流れている内容を険しい顔で見て、慌ててその場にいる人間に尋ねる
「あの!この僕と一緒に落ちたというアカデミアの職員の方の状態は?」
「ホープ、何を言っている。それは私の事でこのとおり無事だ。ホープのおかげだ」
ホープがまた少し考えて言葉を発した。
その言葉の内容に私達は凍りつく
「貴女の怪我がひどくなくて良かった…。アカデミア本部に連絡をします。…えっと、すいません、貴女のお名前を教えてもらえますか?」
ホープはベットの脇に置いてあるアカデミアの通信機器を取り出した
「もーホープ君そんな冗談…」
「………?」
ホープがとても不思議そうな顔をして首を傾げている
私達は暫らく間を置いて、今ホープが置かれている状況を把握し始めた。
その後のドクターの診断によると
ホープの症状は事故で頭を打ったショックと失血によるもので、
ホープの記憶は1カ月の内に自然に戻らなければもう二度と戻らないだろうとの事だった
私はその突然過ぎる出来事にただ呆然としていた。
悲しいとか、むなしいとかそういう感情を持つ以前に、
想像もしていなかった出来事に、実感が持てなかったのだ。
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