4/4
Hope SIDE
秘めていたものが開放され胸が張り裂けそうだった
間接的に僕はライトさんに振られてしまったんだ。
アリサの僕に対する好意は気付いていた。アリサの行動や言動では気付かないほう人の方が珍しいと思う。
だからこそ僕はアリサに期待を持たせないように「心に決めた人がいる、だからアリサの気持ちには応えられない」と言って聞かせていた。
心に決めた人とはもちろんライトニングのことだ。この3ヶ月愛しい彼女と一緒に生活できたことがどんなに幸福なことだったのか、幸福すぎる日常ににおぼれて忘れてしまっていたのかもしれない。ライトニングに思いは通じていなくとも、誰よりも近くにいれるだけで僕には十分すぎる程に幸せだったんだ。
「そう…ですか」
アリサから聞いた、という事を聞いて僕はアリサに心の中で悪態をつく。
どうして僕がライトさんを好いているなんていう、大切な事をアリサはライトさんにばらしてしまったんだ!というどうしようもない怒りが沸いてきた
「そういうことは、直接あなたに言いたかった。」
愛の告白を他人にばらされるなど格好がつかない。その上その秘めた恋心が格段に長い年月だったとしたらやるせないような何とも言えない気持ちになる。
ライトニングは僕の言葉を聞いてばつの悪そうな顔をした
「私はお前に甘えすぎていたんだ。この際だ、まだ言いたい事があるなら言ってくれ。私はその事でお前を避けたりはしない」
僕はその言葉を聞いて一瞬ためらった。
彼女がそう言っていても長年秘めた思いを打ち明けるにはそれ相応の勇気がいる。長過ぎる片思いだからこそ、ほぼ失敗が分かっていてする告白でも受ける傷は大きいだろう。
徐々に手のひらが汗ばんでくる感覚を覚える。
それでも僕は覚悟を決めてライトニングの瞳を見据えた
「いつかは言おうと思っていました。
…僕はあなたの事が好きです。」
一言に込められた想いは無限にある。
口を開けばぼろぼろと愛の言葉が溢れそうだった。
ぐっとこらえライトニングの返答を待つと
ライトニングが、はぁ?と素っ頓狂な声をあげた
「私が言っているのはそういうことではなくてだな…お前が、私のことを迷惑だ、うっとうしいと言っていたと聞いたから…」
ライトニングの様子から 会話がかみ合っていなかったことにいまさら気付く
「僕はそんな事一切…言ってないどころか思ったことすらもありません!」
告白してしまったものの、ライトニングは気にもしていないようだ。一世一代の告白のはずがどうしてそんなことに…
すぐにコミュニケーターを取り出してアリサにコールする
「アリサ!ライトさんにどうして嘘なんて!」
「ええっ!?まさかあの事本気にしちゃってたんですか?やだなぁー軽いジョークですよ」
その会話を様子を伺うように聞いていたライトニングが 安心したように大きくため息をはいてソファーにうなだれた
アリサとの会話を終了し ライトニングの方を見ると なんだか僕までも急に脱力していまい はぁーと大きなため息をはきながら僕もリビングのイスに腰掛けた。
少し重い沈黙の後、口を開いたのはライトニングの方だった
「すまなかったな。なんだか、勘違いをしてしまって」
少し気まずそうな表情を浮かべ、ライトニングは僕の顔を覗きこむ
「いえ、でもさっき僕が言った事は本気ですから。」
と、ライトニングの瞳を捉えそうつげると ライトニングはなぜだか 少しだけ悲しそうな表情をした。
「ありがとう、嬉しいよ。」
ライトニングから返って来たのは、その言葉だけだった。
僕が言う好きとは、男女交際も含んでいる。ゆえに、伝えたいことはライトニングに向ける単なる恋愛的な感情だけではなく、自分は男ライトニングは女として男女交際を望むことも含まれる。
往来ならもっとロマンチックな場所で伝える事が望ましかったのだと思う。
こんなタイミングで伝えるなんて情けない気がするが後には引けない
なかった事に しないで欲しい。
「ライトさん、僕と付き合ってくださいませんか?」
ずれかけた話題を元に戻すと、ライトニングはその綺麗な瞳をさらに曇らせた。
「貴女が困るような事を言ってすいません。でも、あなたに伝えたいと思っていた。ずっと」
ずっと なんて言葉じゃ表しきれないような時間。 僕にとっての10年以上の時間はとてつもなく長い時間に感じられた気がする。
しばらくの静粛の後
「すまない、私はお前とは付き合えない」
静かな声でそう言って、ライトニングは座っていたソファーから立ち上がった。
彼女のローズの良い香りが切なく鼻孔を掠める。
覚悟していたようで、覚悟しきれていなかったその答えに胸がキリキリとひどく痛んだ
「理由を聞いてもいいですか?」
玉砕覚悟の告白だったとはいえせめてきっぱりと諦められるような理由があったならばいいなどと期待してみる
「…私もお前の事は好きだ。多分、それは家族に向ける愛情とかそういうものの域を超えている。」
ライトニングは完全に僕に背を向けていて、表情を伺うことは出来ない
だったら何故、と彼女に問うと 彼女の拳に力がこもる
「私にはやらなければならない事がある。それはとても大切なことなんだ。お前と付き合っても私は時が過ぎれば私はお前の前から去らねばならない時が来る。」
彼女の細い背中、細い肩が震える。僕は反射的に後ろからライトニングの背中を優しく抱き閉めた。
想像していたより華奢な体に彼女の儚さを感じ、彼女の肩に顔をうずめる。
「貴女の言う大切な事、僕に手伝えることはないんですか?」
「ホープの助けがあればそれ以上に心強いものはないさ。でも、お前の助けをかりればお前は、お前自身を不幸にする手助けをしていることになるんだぞ」
「それでもかまいません。」
例えライトニングが言うように、彼女の手助けをすることが僕を不幸にするようなことだったとしても、それが自分にとって悲しい事だったとしても、今この瞬間彼女と深い関わりを持っていられることの方が幸せに思えた。
「その『時』が来るまで僕は貴女に寄り添っていたい。たとえその後に貴女が僕の前からいなくなったとしても、僕はあなたをまた探し出します。どんな手を使ってでも。」
10年前のように信じてつき進めばきっと希望の光が見える。その光はいつだって貴女に繋がっていると信じたから、今こうしてライトニングを腕の中に包み込む事ができているんだ。
ライトニングを抱く腕に力を込める。
「一人で背負わなくていいんですよ。貴女には僕がついている。」
「……私は…お前の傍にいても…いいのだろうか…」
そう囁くと彼女がもぞもぞと腕の中で動き、僕の胸に顔をうずめてきた
今この瞬間、僕は何て幸せなんだろう、そう思った。
その後の彼女にこれ以上の質問を投げかけても焦らせてしまうと考え、今はこれ以上探る事はしなかった。
いつか彼女の言うところの『やらなければならない事』が彼女自身の口から聞けるときまで、気長に待とうと思った。
4/4