With you 3

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アカデミーでの仕事にも慣れてきたころの話だった

第5ユニットでの勤務中に街に現れた通り魔を偶然近くをパトロールしていたライトニングがいとも簡単に捕まえた。

ナイフを振り回すいかつい男が通りがかった女性に沈められるという現地の監視カメラに記録されていた映像がアカデミーのテレビ局で放送されて噂になったことで、ライトニングに昇進の話が持ちこまれた。


昇進といっても、人数の多い第5ユニットから他のユニットへの願書を出せるというだけのものだったが、ライトニングの元へは戦闘を伴う仕事を主とする第2ユニットから誘いがあった。

第2ユニットの人間が資料を見て、私が元政府軍の軍曹であったという経歴に目をつけたらしい。

そっちの方が自分の性に合っていると感じたライトニングはその誘いをうけることになった。

「今日から第2ユニットに配属された、ファロンです。よろしくお願いします。」

初めての第2ユニットへの出勤どんな反応をされるかと思ったのだが

第2ユニットの配属されたグループに行ってみると

「いやーー、珍しい。このユニットに来るのは大体はゴリマッチョの男どもばっかりだから。女と聞いてどんなおっかないのが来るかと思ったら。」

「よろしくな!困った事があったら言ってな!」

思った以上に気さくな人達ばかりだったのでほっと胸を撫でおろす
もっと気難しいのを想像していたのだ

同じ戦闘を担当する仕事だとしても、昔の軍とは大違いだ。

へんにピリピリしていない。

「よし、今日もアカデミアは平和で暇だからトレーニングだ。

新人さんの腕試しだな。勝ち抜き対人サバイバルだ!新人さん!誰か一人にでも勝ったら今日の昼飯奢ってやるよ」

そんなほのぼのした感じで、訓練用装置を使った訓練に参加することになった

装置というのは、剣やギアでの魔法攻撃が当たってもケガもせず痛くもないが、上手くやるとポイントが加算されていく訓練用の装置らしい。

装置をくぐって転送されたのは、スタジアムのような場所

「装置については、習うより慣れろ、だ。他の者は適当に組んで始めろ。相手は…そうだな…お前だ」

隊長に指名された私の対戦相手が困ったような声をあげた

「えー…いくらなんでも、初日でしかも女性と戦うのは…心が痛むというか・・・力の差ってものが…」

その言葉に私は軽く笑みをうかべる

久しぶりに持つ剣に 昔の感覚が蘇る。

ああ、やはりこのヒリヒリした感覚は嫌いじゃない、そう思った。

「やってみなきゃ、分からないだろう」

スタートの合図がかかり、私は前方にいる相手との距離をはかる

「くっ…強い…」

それはそうだ、なんのために、何年戦ってきたと思ってるんだ。

「…次!」

隊長に氏名された兵士が次々と出てくる

私はその兵士たちを難なく倒して行く

男と女の力の差は否めないが、私の力だって伊達じゃない。

そういう世界で生きてきたんだ。

「ええーい、もういい、挑戦者はいないか!」

隊長がしびれを切らして隊員に呼びかける

「もう、あいつしかいない」

「でも流石にそれはかわいそうだろう…相手は新人、しかも女」

「ふっ…私が相手になりましょう。」

出てきたのは、長身な青年。

すらっとしていて、筋肉のつきも良い。

「…おお。手加減してやれよ」

どうやら、この隊で一番腕がたつらしい。

「手加減は必要でしょうかね?」


スタートの合図がかかると、場の雰囲気が変わった
皆が注目するこの試合

相手の放つ殺気がいたいくらいに分かる。

「さぁ、あなたからどうぞ」

挑発され、私はまず最初に攻撃をしかけてみた
私の攻撃は簡単に跳ね返され、反動で体が後ろへ下がった。


「次は私からいきますよ」

正面で受け止めてしまっては、受けきれない。そう判断した私は、相手の剣を横からはたきにかかる。剣同士が火花を散りながら離れた

一秒一秒がゆっくりとすぎていく

油断はできない。


「…止め!15分経過だ。実力は互角…といったところか」

隊長がそう言うと、静まり返っていた隊員がいっせいに騒ぎ出す

「すげぇぇーー!あんた何者だ!」

「どこで剣を教わったんだ!」

「……やかましい」

初日の訓練も終わり、隊員達はそれぞれ家に帰っていった。

平和ボケしている、などという感じも感じなくもなかったのだが…

任務の無い日は訓練しかすることがないので、他のユニットよりは体力的にきつくても、比較的には暇らしい。

荷物を持ち、水分補給のためにミネラルウォーターを飲みほし、帰路に着く

家に帰るとホープと知らない女性が一人。

「ホープ先輩!ちゃんと寝ないとだめですよぉ!やっぱり今夜は私がつきっきりで看病しますから!」

ホープの寝室から声が聞こえる

私は何故だか少し息苦しくなるような感覚を覚え、無意識のうちに息を潜めていた。

「僕は大丈夫だから、それにもう少しすれば同居人も帰ってくるし…」

「じゃあそれまで私はここにいますね♪同居人の方にもごあいさつしなきゃ」

「アリサ…親切にしてくれてありがたいんだけど…」

どうやら女性の名はアリサというようで、私はホープの助手だという人の顔を思い出した。

―どういう関係なんだろうか

そんなことを思いながら私は足音と気配を殺すように部屋に近づいた

「親切だなんてそんな…私はホープ先輩が心配なんですよぉ」

「はぁ…」

「私ホープ先輩の事大好きですもん!ほら、ちゃんと布団かけて!」

アリサの言葉に私が衝撃をうけた

―ホープが好き…?

「アリサ…何度も言うけれど僕には好きな…」

ホープが何か言いかけたタイミングで突然私のコミュニケーターの着信が鳴り響いて心臓がとまるかと思った

部屋の外から聞こえた音にすぐに2人が部屋から出てきた

部屋の外で盗み聞きしていたような状況の私は内心すごく焦っていたのだが…

「ライトさん!帰ってたんですね、おかえりなさい」

「はじめまして、ホープ先輩の助手のアリサ・ゲイデルです。よろしくお願いします!」

アリサの笑みに何だか少し寒気を感じる。そんなことよりも今は…

「…私はライトニングという。」

一体2人はどういう関係なのか そう思ったがそれ以上なにも聞けなかった。聞く事が恐ろしかった。

「じゃあ同居人さんが帰ってきたようなので私はこれで、失礼しますね。あ、ライトニングさん、ホープ先輩は熱を出してしまって。ほっとくと仕事すると思うので、悪化させないよう宜しくおねがいしますね。」

「大げさだよ…ありがとう、アリサ」

アリサが帰ったあと、私とホープの間に沈黙が走った。

「なにをしている。熱があるなら寝てろ…」

私がそう言うとホープはなにか言いたげな顔をしたがしぶしぶと寝室に入っていく

「ありがとうございます。ライトさん」

ドア越しにホープの声が聞こえた。


ホープはアカデミアでは有名人だ。若くして地位も名誉ももっていて、それだけではなく、その整った顔立ち、スタイルを兼ねていては女が寄ってこないはずはない。

現にファンクラブなんてものも発足されているようだ。一緒にいた3ヶ月、あまりに近すぎて昔の少年の頃のイメージが抜けず考えてみたこともなかったがホープにだってもう大人だ。

恋人がいてもおかしくなどない。

そう考えて見ると今まで体験したことも感じたこともないような何とも言えない心の圧迫感に押しつぶされそうになった。

―私は、何を悲しんでいるんだ

ホープに恋人がいるとこは普通の事ではないか、だとしたら私はどうしてこんな気持ちになる?ホープの幸せは最優先すべきことであるというのに…私は自分の中の奥底に眠るどす黒い感情を垣間見た気がした。

もしあの2人が恋人同士だったというのなら、私が今この家にいることはホープの生活の邪魔なのではないか、などという考えが浮かんでくる


「……アリサとは…恋人同士…なのか?」

ある意味爆弾とも思える質問をホープに投げかけて見た

「違います!」

すぐに否定の言葉が返ってきて、胸のもやが少し晴れた気がした

「僕には、貴女がいますから。」

思っていることが、うまく言葉にできない。

私とした事が混乱しているのだ

―なぜこんな気分になる? 

私がいるから、なんだというのだ…

私がここにいるから、ホープは好いた女性が現れても家に呼ぶ事ができないとでも言うのだろうか…そうだとしたら私は…

考えていても埒があかないと思い今日の所はひとまず寝る事にした。



次の日、ホープの熱は大分下がっていたが、大事をとって休暇になったようだった。
ホープに無理はするな、と釘を刺し私は仕事へ向かった。

いつものように一日の仕事を終えて家に帰ろうとしたところを呼び止められた

「ライトニングさん、でしたっけ?これ、ホープ先輩に届けて欲しいんです。」

アリサが、大きめの封筒を私に手渡した。おそらく仕事の資料だろうと推測した。

「それはそうと、ホープ先輩の家にいるお友達ってあなたのことだったんですね。
お友達ってことは、恋人関係ではないんですよね?」

アリサは疑うように私を見る。その瞳はにこやかにみえるがとても険しい。それは私もアリサに問いたい事だ、と思った。

「ああ。訳あって住ませてもらってるだけだ」

「…そうですよね。…ホープ先輩のタイプとあなたは逆ですもんね。一瞬ライバル登場かと思ったけど、あなたなら心配ありませんね♪」

どういう意味だ…?

「…ホープ先輩、あなたの事迷惑だって言ってましたよ。いつまでも家に居座ってうっとおしい、邪魔だって。…あっ、これ先輩との秘密でした!忘れてくださいっ。」

アリサが背を向けて、去ってゆく
アリサの言葉に心が壊された気がした。

恐れていた事が現実に起きてしまった…実際私はホープに甘えすぎていたんだ。


―私がホープの邪魔になってしまっていた…うっとうしいとまで思われて…


ホープに謝らなくてはいけないな、そう思った。それと同時にホープの家を出よう。

これ以上ホープに甘えていたのではさらに迷惑をかけてしまう。

家に帰ると、ホープはすっかり具合が治ったようでいつもより豪華な夕食を作って待っていた。

私はその様子を見てとても申し訳ない気持ちになった。

「ホープ…いつもすまないな。」

「いいえ、僕が好きでやっている事ですから」

ホープの屈託のない笑顔を向けられて、一瞬アリサの言葉が嘘であればいい、なんて事を考えたのだがそれは自分にとって都合のいい考え方に過ぎない。

実際、アリサはホープの助手でホープにとても信頼されているのであろう。

だとしたらホープが本心をアリサにさらけ出していてもおかしくない。

「ホープ、私はそろそろこの家を出ようと思う。今までさんざん迷惑をかけてすまなかったな」

私がそう言うとホープがひどく悲しい顔をした

「どうしてです?僕と一緒じゃまずいことでも…」

「アリサから…聞いたんだ。お前が私に対してどう思っているか。知ってしまった以上はこの家にはいられない」





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