悪魔の訪問者
「今日は来客がある」
レイは、何の前触れもなく、唐突に言った。
シセラは、紅茶の入ったティーカップを差し出す手を止め、自分の主人を酷く驚いた様子で見た。
「…ご来客、ですか?」
シセラはようやく、カップを起き終える。
レイが見上げると、不安いっぱいのシセラの顔があった。
「…勿論、それは悪魔なんですよね」
質問、というよりも確認に近い。
レイは短く、
「当たり前だ」
と答えた。
「…私は、どうすればいいのですか」
天使が地獄に居てはいけない。
見つかればどうなるか、シセラは、前に脳内に流れた映像を思い出した。
「ここで召使いとして働いてる以上、もてなしは貴様がやることだ。」
冷たい、言葉。
「だが、貴様をその外見のままにして客前に出すつもりはない。」
レイが椅子から立ち上がった。
上から威圧するようにシセラの顔を覗き込むと、愉快気に、ニタリ、と笑みを浮かべた。
「貴様を悪魔にしてやろう」
来い、と短く呟くと、戸惑うシセラの腕を取り、ラウンジまで連れて行く。
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