「ぅ…」
ソファに座る、シセラは顔をしかめながら、短く声を発した。
ラウンジに連れて行かれたシセラは、再び手当てを受けていた。
傷口を確認し、化膿していないか確かめる。治りが悪ければ、医者に診てもらう必要があるかもしれないとレイは言った。
しかし、幸運なことに血は止まっており、徐々に治りつつあるのが見られた。
ホッとシセラが安堵の溜め息を漏らしたのも束の間、自分の脚をみて悲鳴をあげかけた。
昨日は血にまみれて気付かなかったが、改めて傷の酷さを目の当たりにした。
切り傷、というより抉られたに近いグロテスクさに、気分が悪くなる。
レイはこれを平然とした様子で見ているが、平気なのだろうか。
昨日と同じように消毒液を傷口に塗り、新しい包帯を巻いていく。
傷を意識しないように、俯くレイの頭部だけを見つめていると、
「終わったぞ」
いきなり顔を上げたレイと視線がぶつかった。
「…っ!」
端麗な顔立ち。澄んだ赤い瞳が、不意をつかれ挙動不審になるシセラを一直線に射抜く。
「どうした」
問われれば、まごつきながらも首をぶんぶんと横に振る。
「何でも、ありません。あ…っ、ありがとうございます」
お礼を受けて、レイは気にするな、と短く返す。
「その治り具合なら、医者もいらないだろう」
「医者…」
きっと、それも悪魔なのだろう。
「俺には、治せないからな」
「…えっ…?」
ぽつりと呟くレイ。
シセラは思わず問いを返していた。
「…」
だが、レイには聞こえなかったのか無言のままラウンジを出ていく。
その後ろ姿をシセラは寂しそうに見送った。
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