次の日の朝、

〜♪


緩やかな、クラシックの音楽。
小さな部屋を満たすピアノ音は、すぐ隣で眠る少女の耳にも届く。


「…ん…ぅ」


爽やかな目覚め、とは行かないらしい。

苦しそうに喉奥から低く呻くと、腕を伸ばし目覚ましを止める。

途端に止む、クラシックのメロディー。

そのまま横に伸ばした腕を頭上でもう一度広げ伸びをすると、急に腕の力を抜いた。

脱力した腕が、マットレスに沈む。


「…ふぁ」


漏れたあくびを手で隠すと、シーツに潜る脚を試しに少しだけ動かしてみた。


…痛みは、特に感じない。


昨日は立つこともままならないほどだったが、これならば大丈夫そうだ。

そう思い、ベッドの端に座るような体制になると、まずは包帯のない方の足を床につける。

次に、怪我をした方の足を、気をつけながら同じように下ろす。床に触れた時に若干痛みが走ったが、それも消えると腰を浮かせ立ち上がった。


「……っ、と」


なんとか足に負担をかけずにバランスを保つ。まさか普段意識しないことが、怪我だけでここまで大変になるとは予想もつかなかった。

おぼつかない足取りでバスルームに向かい、いつもの倍の時間をかけて準備を終える。


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