やり方が、わからない。
昔なら、一々手順を思い出さなくても簡単に治せた傷が、今はどうやってもできない。
魔法自体が、出せないようだった。
「できない…?」
愕然と呟くシセラに、レイは淡々と言葉を投げかける。
「できないなら、続けるぞ」
そして、消毒液を含ませたガーゼをふくらはぎから腿にわたる傷にあてがう。
「…痛…ぃ」
押し殺しても時々漏れるシセラ声を気にしながら、丁寧な手つきで脚の血を拭き取ると、優しく包帯を巻いていく。
足首辺りで包帯をキュッと縛ると、
「終わったぞ」
シセラに一声かけた。
ようやく痛みから解放されたシセラは長い長い溜め息を漏らした。
「あ、ありがとうござい…」
お礼をしようと立ち上がるが、やはり痛みに負け、ソファに倒れ込む。
そこに、レイがスッと手を差し出した。
「その脚では部屋までいけないだろう」
「…」
その手を、じっ、と凝視する。
レイの言いたいことはわかる。
つまりは、また抱きかかえてやる、と言うことなのだ。
「それとも、このままラウンジに残るか?」
その言葉が、シセラの決心を固めた。
「…お願いします」
シセラの返答に、満足げな表情を見せると、伸ばされたシセラの手を掴み、ふわりと抱き上げた。
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