怪我
ガタンッ
古びた、テーブル。重いが、一人でも抱えられるそれを廊下まで運び出すとシセラは額の汗を拭って小さく息を吐いた。
「ふぅ…」
所々、ささくれ立ったテーブル。
元々、書架の隅にひっそりと置かれていたものだが、先日シセラがうっかり指を怪我したことから、廃棄しようという話になった。
厚手の手袋にも既に、無数の細かい棘が刺さっている。
この為にレイから貰ったものだったのだが、この様子だと一度使っただけでボロボロになり使いものにならなくなるだろう。
書架の戸を閉めると、後ろにあるテーブルの両端を掴む。持ち上げると、足元に気をつけて歩き出した。
視界の下半分はテーブルで覆われている。もちろん床に何かが落ちているということは殆ど無いのだが、自然と、ゆっくりと警戒した足取りになる。
時々休みながら、果てしなく長い廊下を歩く。普段は意識してなかった屋敷の広さが改めて思い知らされた。
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