あれから本を読み漁りきちんとした淹れ方を学び、そこから何日もかけ練習したかいがあり、シセラはみるみるうちに上達していった。
コトン、と木製のデスクに置かれ音を立てたカップを見て、クスクスと笑いを漏らす。
「…何がおかしい」
レイは突然笑い出したシセラを不思議そうな顔つきで見上げるが、当の本人はトレイで口元を隠しながら、我慢できない笑声を零す。
「何でも、ないです」
ひとしきり笑った後、少し乱れた息を調えるために深呼吸をする。
「それより、マスター、」
もう気にしてはいないが、それでも眉根を寄せているレイに声を掛ける。
「また、淹れましょうか?」
空になったカップを指を揃え丁寧な仕草で示す。
レイはそれを一瞥すると書類に視線を戻し、
「頼む」
ぶっきらぼうに答えた。
たちまち綻ぶ、シセラの顔。
「はい」
明るい返事をすると、また一度、ふふ、と笑った。
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