その後の災難
レイは、やがて男の姿が見えなくなったとき、
「…帰るぞ」
とぶっきらぼうに言った。
もう既に陽は沈もうとしており、空は青から濃い茜色のグラデーションに染まっていた。
肌寒い空気がむき出しになったシセラの腕を撫で、そろそろ帰る頃だと示している。
しかし、今のレイの発言には別の原因があることをシセラは十分に理解していた。
シセラが首肯するのを確認して、レイは無言のまま街道を歩き出す。
「…」
今朝の平静さは消え、見上げた顔には険阻さが表れていた。
かける言葉が見つからない。
今何を言っても、レイの気を紛らわすことはできない、シセラはそんな気がして目線を地面に向けた。
腕の中のプレゼントをキツく抱き締める。
これまで他人に対しては何も気にせず、自由に育ってきた身には、気の利く言葉の一つも浮かばない。
せめて、今日の夕食は奮発しよう、とそれくらいの事しか思いつかない自分が嫌になる。
そんな時、
「―!?」
ガッ、とキツく捕まれた腕が悲観的な考えを巡らせていたシセラを現実に引き戻した。
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