「…」


シセラは疑ったままの表情を変えず、小さく、


「……嘘」


「本当だよ。本人に聞いてみるといいさ」


早く買っておいでと促し、一応は信用したシセラも渋々といった様子で一歩を進めた。










「お待たせしました、マスター」

すぐ外で待っていたレイに、店のドアを開けながらシセラが声をかけた。

レイはシセラを一瞥し、そして―


「―!」


直後に続いて出てきた男を見るや否や瞳を目一杯見開く。


「マスター?」


視線を外したレイを不思議そうに見上げる。彼の視線を追いかけて、先程自分を助けてくれた男に向いていることに気付く。

男は二人の視線に気付かないのか、無視をしてるのかこちらに目もくれず街道を歩き出す。

その後ろ姿をみて、シセラがあることに気付く。


「翼が…無い」


真ん中を悠然と歩く姿は、悪魔の世界の中では明らかに不自然なのに、誰も気にする者がいない。


「…マスター、あの人、ご存知なんですか?」


厳しい表情で見送るレイに問うが、返事は無かった。

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