シセラがハッと隣を向くと、いつの間にか立っていたらしい男性と目が合う。

「何か困ってるのかい?」

ニコッと微笑んだ友好さに、シセラの緊張もいくらかほぐれる。


「あの…知り合いのプレゼントで…」


すると、男は、そう、と微笑みを貼り付けたまま、

「お相手は、男性?」

と、茶化すような調子で訊ねた。

その質問には、頬を僅かに紅潮させてシセラはコクンと首を控えめに縦に振った。


「それじゃあ、コレがいいよ」


「あ…」


不意にシセラの手を取ると、とある棚の前まで引いていく。

男は掛けられていたロケットペンダントを手に取ると、シセラにしっかりと握らせる。


「きっと気に入ってもらえるよ」


手中のアクセサリーを一目して、疑惑の眼差しを向ける。

「でも、これ…」

シセラの抗議を、人差し指をその唇に当てて制した。


「大丈夫、信じて」

「…どうして…」


未だに不安そうな表情のシセラに、男がクスリと笑って、


「一応、君のご主人様とは顔見知りだからね」


ぼそりと囁いた。

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