入るとすぐに、小さい室内に密集する高い棚の列が目に飛び込んできた。

「好きな本を選べ」

唖然としているシセラが、ハッとしてレイを見る。


「…いいんですか?」


遠慮がちに問い、


「二度言わせるな」


レイが厳しい目を向ける。

シセラは小さく俯くと、気を取り直して、本を選び始めた。


「黒い…本」


どうやら、ここには無いらしい。溜め息を小さく吐いたとこに、ちょうどレイが通りかかった。


「見つからないのか」


こくん、とシセラは頷く。

「あ、でも、大丈夫です」

そしてレイが本について何か質問してくる前に、慌てて言い繕う。


「元々、期待はしてないので…」


別に嘘では無い。あの本がそもそも売っているのかどうかすら怪しく、だから期待もそれほど強いものではなかった。


「…そうか」


シセラを直視し、顔を少し緩ませる。


「次はどこに行きたい?」


シセラはちょっとだけ考え込み、


「…お昼を…」


顔を赤くし、若干俯き気味に、シセラは小さな声で提案した。



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