ふら、と体がよろけるのを、レイがさり気なく支える。
「…ありがとうございます」
照れながら顔を上げるが、レイはさして表情を変えることはない。
「着いたぞ」
その言葉に促され周囲を見渡すと、レンガ造りの小さな建物が並ぶ街道が視界に入った。
道歩く者は、みんな黒い翼を持っている。もちろん、今はシセラもそうなのだがなんだか居心地の悪さを感じる。
「離れるなよ」
短く言うと、近くの店に入っていく。
本屋だった。
…もしかしたら、あの本も。
シセラはいつかのように淡い期待を抱きながら、カラカラとベルの鳴るドアをくぐった。
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