「…それでは私もこれで。」
リズの姿が消えるのを確認した後、ヨハネは別の扉に向かう。
「…待ってっ…!
ヨハネ、どうして…」
掠れた声でヨハネを呼び止めようとするが、シセラに気付くことなく法廷を後にした。
―その夜。
「見張りも楽じゃないな…」
兵士の一人が呟く。
「そうかなぁ。
お嬢様、逃げる気配全然無いし…
と言うより、あそこまでされたらどう頑張っても脱獄は無理じゃないですか?」
言葉通り、シセラは自分より少し背丈のある十字架に磔にされていた。
「呪文を編んで作った鎖も巻き付いてるし、牢自体にも結界張ってあるし…。
これ、見張りいらないですよね」
「まぁ、万が一に備えてなのかもしれないな」
「楽だし、いいんですけどね」
すると、初めに話し出した兵士が苦笑を漏らす。
「どうしたんですか」
「長年仕えてきたお嬢様が苦しんでるのを眺めるだけって言うのが、"楽じゃない"んだよ」
「……何でこうなったんですかね…」
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