パタパタ、と廊下を小走りに駆ける音。


最初に、レイの書斎に向かい、ゆっくりと息を落ち着かせてからドアをノックする。


「……」


最近は、此処にいないことが多かったのだが、やはりと言うべきなのか、返事は無かった。

この間のように、中に入ったりはしない。すぐに諦めて、次にレイがいそうな場所を探しに行った。


次に思い付いたのが、ラウンジ。レイも、夕方になるとその部屋で読書に勤しんでいる姿を幾度かシセラは目にしていた。


「…失礼します」


この部屋は、基本的に入室は自由。だから一言声をかけてから、ノブをそっと回した。


「マスター…?」


顔を覗かせると、ソファに座り毎度のように読書に耽っているレイの姿があった。

「…?」

しかし、どこか様子が違う。

「……マスター…?」

近付いて、ほとんど聞こえないような小声で呼び、横から顔を覗き込む。

そこには、静かに瞳を閉じ、緩やかな寝息を立てていた。


「…」


端正な顔立ちは、寝ていても効果があった。

思わずシセラは小さく口を開けたまま見取れてしまう。


数分。


ハッと何か思いついたように顔をあげると、急いでラウンジを出て行った。



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