雨が、強くなった。
滴がガラスを打ち付ける渇いた音がリズミカルに響く。
シセラはそれを、今度は部屋の窓から見上げていた。
もっと、ちゃんと謝った方がよかった、と思うと沈んだ気持ちに余計に影が増す。
だが、今またレイのところに行っても悪循環になるだけだろう。
「どうしよう…」
椅子の上で膝を抱え、顔をうずめる。目も瞑れば、辺りは真っ暗だった。
…コン、
シセラはバッ、と顔を上げる。
ノックが聞こえた気がして、ドアの方を見やる。
コン、コン
今度ははっきりと聞こえた。
あまり顔を合わせたく無いのだが、今なら謝る良い機会かもしれない。
「…はい…」
静かに戸を開く。
案の定、レイが戸口に立っていたが、その表情は少し前よりも柔らかかった。
「先刻は―」
「ごめんなさいっ!」
レイの言葉を遮り、シセラは叫びに近い声で謝った。
「…もう気にしていない」
レイの優しい声が降ってきた。
「…雨の日は気分が悪くなる」
短い言葉にシセラは、
「じゃあ、お茶を入れます。きっと良くなりますから」
と微笑み、レイは、
「ああ、そうしてくれ」
と答えた。
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