表紙にそっと触れてみる。
紙のような、革のような不思議な質感。ひんやりとしたのが指先に伝わって気持ちがよかった。
「…」
ハードカバーの端を持ち、ゆっくりと捲り―
―バンッ
開きかけた表紙が、急に、閉じられた。
「―!」
驚きに声を上げそうになるのを、なんとか抑える。
本を無理やり閉じた、褐色の腕。目で腕を追い、その先を見ると、
「何をしている」
仏頂面が冷静に見下ろしていた。
心なしか、目つきが普段よりも鋭い。赤い瞳もいつもより怖い。
完全に、怒っているようだった。
「…ごめんなさい、」
レイは何も言わない。
「…あの…っ」
「中は見たのか?」
シセラは首を横に振る。
「そうか」
レイはそれだけ言うと、シセラから黒い本を取り上げる。
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