「でも、さすがに皆も王政だけはあなたに任せたく無かったみたいね。
…まぁ、」
リズが素早い動きでシセラの顎を持ち上げる。
唇と同じくらい真っ赤な長い爪がシセラの頬に食い込む。
「…痛…」
「残念がることもないわ。
あなたは今から処刑されるから」
シセラの青のその瞳が目一杯に開き、微かに涙が溜まる。
対照的にリズの赤茶の瞳は嘲笑うようにギラギラと不気味に光っていた。
「あなた達、この子を今すぐ処刑して頂戴。」
シセラの顔を放すと、いつの間にか二人を囲んでいた兵士にリズが命令する。
「し、しかし…」
「まだ十二歳の少女…」
「殺すなんて…」
その思わぬ発言に兵士達から戸惑いの声が聞こえるが、リズはまた、先程より大声で、
「殺せ!!
今すぐに!!」
「…」
「…し、しかし、姫様…」
困ったように互いの顔を見合わせる兵士達の一人が、恐る恐る、話し出した。
「"法典"によって、天使が殺人を犯すのは禁止されています」
リズはその兵士を睨みつけた。
「あ、いえ、その…」
「そんなのどうでもいいのよ!!!
法なんて変えればいいんだから!」
近くの兵士の槍を引ったくったリズはそれをシセラの頭上に高く掲げた。
「あなた達がやらないなら私がやるまでよ!」
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