カチャカチャ、と食器とカトラリーが当たる音だけが虚しく響く。
とても静かな昼食。
シセラは質問を切り出そうにも、沈黙が破れず、何も聞けないでいた。
「……あの、マスター…」
ようやくシセラが聞いたときには、もう既に食事は終わりそうだった。
「何だ」
「…あの、」
何故だかは知らないが、シセラは本の話を切り出してはいけない気がした。
だから、
「…マスターの、名前を、まだお聞きしてないので、」
途切れ途切れに、そう切り出してみる。
マスターは、一瞬、意外そうな顔をし、そして、からかうような、小さな含み笑いを漏らした。
「何故知りたいんだ」
「…え?」
名前を知るのに、理由がいるのか、そんなことを全く考えていなかったシセラは、押し黙って俯いた。
[←] | [→]
back