もう一つは、懐かしい、天界の城の中。
槍を持った兵士達に囲まれている少女は、紛れもなくシセラだった。
兵士達は一歩一歩、逃がさないよう、何重にも輪を作りながらシセラに近付いていく。
すぐ目の前に立つ一人が、槍を振り上げる。
ギラリ、と光るその先は、迷い無く、シセラの胸にー
「嫌ぁっ!」
シセラが悪魔の手を強く振り払う。
あまりにも残酷で、それでも現実的で、鮮明に再生された映像に、シセラは涙を堪えきれなかった。
「…決まりだな」
悪魔は気にすることなく、一人満足そうであった。
「今日はその散乱している本を片付けるだけでいい。
明日から、本格的に働いてもらうぞ。
…それと、」
シセラの前にしゃがみ込み、目線を合わす。
「これからは、俺は貴様の"マスター"だ。
それだけはしっかりと頭に刻んでおけ。」
言い残すと、シセラを部屋に置き去りにし、そこを後にした。
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