「召使い…なんて、絶対嫌!
悪魔に仕えるなんて―」

シセラが叫ぶと、悪魔は真剣な面持ちに変わり、人差し指をシセラの額に強く押し付けた。

「痛っ―」

「貴様に選択の自由が無い事を理解しろ。
俺が匿わなければ、貴様は地獄で捕獲され殺される。
万が一、天界に戻れたとしても、あの卑しい義姉に死刑にされるだけだ。
三つの選択の中で何が一番最良だと思う」

ふと、シセラの脳内に、二つの映像が流れる。

一つは、体中に傷を負った、シセラ自身が、見慣れない街を泣きじゃくりながら、何かから逃げている場面。

空は異様に赤黒く、空気もシセラが息苦しさを感じるほど、悪意に満ちていた。

追いかけて来るのは、皆、黒い翼を持つ者。

誰もが、シセラを殺すのを楽しむように、顔に満面の笑みを浮かべていた。

どれだけ必死に走っても、脚が動かず、どんどん距離は縮まっていく。

そして、シセラの肩を、誰かが掴んだ。

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