「…っ」

シセラは言い返す事ができなかった。

「さて、」

そんなシセラを尻目に、悪魔は悠然と話しかける。

「二国間の掟で地獄に来た天使は捕獲され、殺されるのは、貴様も知っているだろう」

シセラの表情に恐怖が表れ、悪魔から数歩離れる。

それを見て、悪魔はクク、とまた笑った。

「…本来ならば。
俺は、捕獲もしない。殺すこともしない。

―貴様を匿ってやる。」

その言葉が、限りなく非現実的に聞こえた。

「疑っているな」

悪魔がスゥ、と目を細める。

「…悪魔は、信用できません」

言った後で、シセラは自分が相手を挑発出来ない立場にいることに気付く。

下手に怒らせたら、それこそ本当に…。

或いは、始めから殺すつもりだったのかも知れない。

「勿論、貴様にはそれなりの事をしてもらう。」

「―!」

悪魔の顔の近さに、シセラの心臓が跳ね、早く脈打ち出す。

色んな思考を巡らせていた間に、悪魔は一歩手前まで近付いていたのだった。

「俺の召使いになれ。」

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