悪魔はいたずらっぽく、クク、と喉を鳴らし笑うと、
「此処は地獄だ。
貴様こそ何故此処にいる。」
と、問い返した。
シセラの顔に動揺と混乱が表れ、悪魔はまた愉快そうに笑う。
「嘘…!」
強く首を振り、シセラは涙の溜まり始めた目で悪魔を睨む。
「嘘ではない」
悪魔はキッパリと言い放つ。
納得はしないにしても、一応は理解したシセラは、立ち上がり、服に付いた埃を祓う。
「…帰ります」
ぶっきらぼうにそう言うと、ドアに向かうが、
「貴様に帰る場所が在るのか」
悪魔の一言で、足が止まった。
「…ある」
シセラは躊躇いがちに言い、悪魔が、
「貴様を殺そうとする場所か」
と返す。
「…どうして…知ってるの…!」
シセラの問いに、悪魔は答えず、代わりに、
「どの道その翼ではもう飛ぶことも出来ないだろう」
有り得ない方向にひしゃげている右翼を指差した。
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