悪魔との契約

失われたシセラの意識はその直後、大量の落下物によって戻された。

「イタ…」

落ちてきたそれらの一つを見ると、知らない言葉で書かれた本だった。

「…天使のご来客とは珍しいな。」

上から低い、落ち着いた声が降り、シセラは本から顔を上げた。

数十センチ離れたところに、背の高い、腰まである長い黒髪を持つ青年が立っていた。

シセラを見下ろすその口元には妖しい微笑み。同じように笑う眼は血のように赤かった。

そして何より目立つのは、背中から生える、一組の、漆黒の巨大な翼―

それは、この青年が純血の、もしくはそれにとても近い血を引く悪魔だと言うことを示していた。

「…あ、なた…」

言葉を詰まらせながらも、シセラはゆっくりとその悪魔に問う。

「どうして、此処に…いるの?」



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