「あぁっ…!」
シセラの口から絶望の声が漏れる。
城の最上階、テラス。白い石壁を越えればそこは数十メートルの落下だった。
飛び降りたら、確実に最期。
…人間なら。
「いい加減諦めたら?」
少し大人びた、それでも聞き間違えるはずのない声。
シセラは振り返って、リズが、数百人程の兵士の先頭に、不適に笑っているのを確認した。
「どうやって逃げたのかは知らないけど―」
リズの目が一瞬、二人の兵士に向く。
兵士達は少し退き、同時に鎧の金属音が響く。
「あなた、死刑よ。」
「…」
シセラは石壁を背にしたまま、その下をチラリと見る。
「―私は―」
その瞳が真っ直ぐ、リズの瞳と合う。リズが、一瞬、その強い眼差しにたじろいだ。
「―死にたくない!」
後ろに倒れ込むと、体は簡単に壁を越え、重力に沿って物凄い速度で落ちていった。
シセラは急いで翼の制御を試み、
「―!?」
長年使われていなかったせいで、全く動かせないことに気が付く。
遠くにあった地面が瞬きをする間も無く近くなり、シセラは目をキツく瞑る。
「―!!」
シセラは自分の体が地面に叩きつけられるのを感じ、同時に体中に激しい痛みが走った。
そのまま、シセラは意識を失った。
[←] | [→]
back