「…う、そ…」

出口を探すと、もう既に開いている。

―五年後の今日。
一秒足りとも延長はしないわ―

そんなリズの言葉がシセラの頭によぎった。

強い恐怖がシセラを襲い、脳が考える前に体が既に動いていた。

牢からの唯一の出口を飛び出すと、階段を駆け上がり一階へと向かう。


目指すは、外。


もっと言うなら国の外、どこかリズの支配が届かない場所。

…勿論、この天界でそんな場所は一つもないことをシセラは知っていたが。

―とにかく、どこか遠くへ―

それだけが、今シセラの中にあった。


「誰だ、お前は!」

ふと、背後で険しい声がする。シセラの心臓が飛び跳ね、同時に振り向く。

「侵入者か。今すぐ―」

言いかけた兵士の顔が驚きに変わる。口をポカンと開け、そこで放心したようにただ立つ様は少し間抜けにも見えたが、余裕のできたシセラはその隙に逃げ出した。

「あっ、待てぇ!!」

我に返った兵士も走り出し、だんだんと騒ぎを聞きつけた他の兵士達も加わり、人数が増す。

シセラは後ろの大衆を見、前を向くと遠くの廊下の角からも大群が迫ってくるのが見えた。

大急ぎで近くの階段を駆け上り、逃げ道の確保。

…をしたはずだったのだが。
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