堕ちた天使
「―…」
シセラはゆっくりと目を開けた。
誰かに起こされた訳ではなく、だから、とても清々しい目覚めになるはずだった。
「…っ、痛…」
しかし、まるで頭を強く打ち付けられているような痛みがすぐにシセラを襲う。
それに耐えながら、ぼやけた視界を何とか正し、目の前が全て緑で覆い尽くされているのに気付く。
「…?」
シセラが何が起こっているのか把握する前に、パキィン、という金属音が聞こえ、体を縛り付けていた鎖が粉々になり、宙に霧散していくのが感じられた。
脚に力が思うように入らず、斜めに倒れ込む。ブチブチと体に纏わりついているものが千切れる。
そして、無抵抗にシセラの体は地面に倒れた。
「いた…い」
体を起こそうと床に手を付く。その時、シセラは、腕に巻き付いたポトスを目にした。
そして、
「…あれ…?」
記憶に残るより一回り程大きい気がする手。
シセラは立ち上がった後、その手をまじまじと見つめた。
それから、当たりを見回す。
「…」
心なしか、視界が幾分か高くなった気がする。
そして、いつの間にか腰よりも伸びた、金色の髪。
それらは、遠い年月を表しているように、シセラには思えた。
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