―コンコン


レイは蝋燭で周囲を照らしながらシセラの部屋の戸を軽くノックする。


「シセラ」


呼びかけてもみるが、返事が無い。それどころか、ドアの向こうは恐ろしいくらい静かだった。


「……」


訝しげに眉を寄せ、ノブに手をかける。開くと、中に入っていった。


「シセラ」


もう一度名前を呼ぶが、結果は先程と同じ。

予想が外れたと考えたレイは、すぅ、と目を細める。

「…」

諦めて別の部屋を探そうと振り返ったレイの目に、バスルームのドアが映った。


コンコン、とそのドアをノックするが、やはり反応はない。

しかし、



ガタッ



と、バスルーム内で何か物音がしたのを、レイは聞き逃さなかった。


「シセラ…?」


小さく訪ねながら、レイはバスルームのドアを開けた。



目を瞑り、耳も塞いだ。
周囲で何が起こっているのか、もうシセラに知る手段はほとんど無かった。

早く明るくなって欲しい、そればかりを思っていると、


「―いっ」


右腕が触れていた、バスルームのドアが微かに揺れた。振動が二回、ドアから腕を通じて全身に伝わる。


―何かが、すぐ向こうにいる。


心臓が跳ね上がるほど驚き、思わず身じろぐと、近くにあった何かを蹴り飛ばした。


「ぁ…」


うっかり漏れた声。慌てて口を塞ぎ、耳を澄ます。

何も聞こえず、ホッと胸を撫で下ろした直後、


バスルームのドアが開いた。




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