瞬間、遠くから幼い悲鳴が聞こえてきた。
「夢魔…!」
レーヴは強く地面を蹴って、悲鳴のした方に向かった。
「…っ」
夢魔を視界に捉えたレーヴの足が止まる。
それは、レーヴの身長をはるかに越えた、人型夢魔だった。
つまみ上げられた少女が人形のようだ。
レーヴの気配に気付いた夢魔が振り向く。
目が合うと、ニィッと笑った。
「その子を離して」
冷静に、静かに言う。
もちろん、無駄だとは承知していた。
「大人しく、還って」
それでもなお、レーヴは目を険しくし、言う。
夢魔は黙ったまま、つまんでいる少女を口の中に放り込もうとして─
[*prev] [next#]
[目次]