レーヴは一つの夢に長期間とどまることが許されていない。
しかし、伝わってくる少年の気持ちは、文字通り"ずっと"いてほしいというものだった。
『ねぇ』
少年が暗い表情でこちらを見る。
『ずっといてくれないの?』
徐々に、言葉に怒りが含まれていく。
『ねぇ、…ねぇ!』
必死にせがむ声に、微妙に違和感を感じる、レーヴ。
それに気が付いた瞬間、
「ネェ!」
その声が全く違うものに変わった。
レーヴがハッとすると、少年の造形が崩れ、粘土状の塊になる。それが少しずつ人のような形に作られていく。
「夢魔…―っ」
寄生型の、夢魔。桃色の粘土の体の一部から、少年の肌が見え隠れする。
夢魔は少年を取り込みながら、精神を蝕んでいっているのがわかる。
「―止めなさい!」
一瞬一秒も無駄にできない状況で、レーヴはその塊に飛びかかった。
粘土状の体に拳を叩き込むが、柔い欠片が飛び、欠けた部分が修正される。
レーヴは顔をしかめた。
もう一度、強く殴りかかる。拳が桃色の体に触れると、その部分がぐにゃりと無抵抗に凹み、その手を掴むように包んだ。
「…あっ!」
何かしらの反応を取る前に、レーヴも夢魔に取り込まれた。
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