Chapter 8
郊外にある、古いアパート。

壁の至る所に入るヒビ、同じように砕けた窓ガラス、そしてほとんど人の来ない通りに立つそれは、周囲のきれいな家々の隙間に隠れるように建っていた。

もう誰も住んでいないだろうその建物の一室を占領する、白髪の少年。



―蒐だった。



蒐は小さな空間のほとんどを占領するように中央に置かれた、ソファの上で寝ころんでいた。

背もたれが歪み、布が破れた場所からは綿が飛び出ている。それを全く気にすることなく、蒐は目を閉じ、穏やかな寝息をたてていた。


ふと、窓から入ってきていた月光が遮られる。


眠っていた蒐が気付いたか定かではないが、その直後に目を開いた。

深紅に染まった瞳が虚ろに天井を眺め、しばらくその状態が続く。

蒐が再び眠りに就こうとした時、

「彼女を見捨てて、余裕だね」

聞き慣れた、耳障りな声が降ってきた。

反射的に目を開いた蒐は、ソファから飛び起きる。

足元側の床に立つ、髪の長い影。

「…テメェは―」

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