緋色の声が低くなり、同時に彼は麻耶を放る。
人形のように投げられた麻耶の体は鉄棒を目掛けて落ちていく。
―ガン
堅いもの同士を打ちつけたような音。
「う―」
苦痛を伴う声も、暗い闇夜に響く。
無傷な、麻耶の体が地面に崩れる。後ろから莎夜が、ソレと、鉄棒の間に阻まれボロボロになった体を立たせていた。
「無様だね」
緋色は優勢さからか、実に愉しそうであった。
莎夜の髪を鷲掴みにして、左胸に手を当てる。
「実を言うと、君に怨みは無いんだけどね…」
莎夜が伸ばした両腕が、その掌が緋色に触れる前に、すっぱり切り落とされる。
左肘から先と、右手首から先が地面に落ちた。
「っ!あ、あ"」
キツく結んだ口から、堪えきれなかった悲鳴が零れた。
「あの吸血鬼の顔を見るのが楽しみだな…」
独り言のように、ニヤリと過虐心いっぱいの笑みを浮かべると、その指を莎夜の体に埋め込んだ。
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